検索窓
今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:29,367 hit

気持ちを汲み取る、愛故。【橙】 ページ13

.

あのサバイバルを終え、無事に帰宅した。
結果は残念だったからこそ疲労感が凄い。

『おかえり、お疲れ様。』
「ただいま、」

そんな時でも傍でただ黙って支えてくれるのが
半同棲している彼女。

今日も俺の精神面を理解したのかそれ以上話し掛けてくる事は
なくて、口角を少し上げながら夕飯の支度をしている。

『康ちゃん、ご飯食べる?』
「ん、食べる。」
『わかった。じゃあ持って行くね!』

バランスの良い食事を毎度考えてくれて、
昨日今日の仕事はちゃんとした食事が取れていない事を
知ってか肉が沢山の献立だった。

向かい合わせに座って、いただきますをして。
テレビも付けていない部屋でシンとした空気のまま食べる。
彼女が作った料理を口に運ぶ度に心が緩んで
嫌って程流した涙がまた出て来た。

『康ちゃん..いっぱい頑張ったんだね。』
彼女が近くに寄って来てくれて手元にあった
ティッシュで涙を拭ってくれる。

こんな俺を受け止めてくれて懸命に愛してくれる彼女が
堪らなく愛しくなって箸を置いて首元に腕を回し抱き締めた。
その後には勿論子供の様に声を上げて泣きましたけど。

よしよし、と背を撫でてくれる温もりが心地良い。

「ありがとう、A。」
『ううん!落ち着いた..?』
「お陰様で。」

また俺の涙を拭いてくれてにこりと微笑む彼女。

『じゃあご飯食べようね。』
「今日の唐揚げ美味しいな、毎日美味しいけど。」
『本当?嬉しいなあ。』

今にも落ちそうな程蕩けた目元で嬉しそうに喜ぶ姿に
俺も笑顔になる。鼻を啜りながら箸を持って食事の再開。

「俺これも好き!初めて食べた!」
『私も好きだったから作ってみたの。』

他愛のない話で笑い合って、美味しく飯も食べて。
ご馳走様をした後は食器を何も言わずとも片付けてくれる。

「俺やるで、座ってて。」
『いいの、康ちゃんは大人しくしてて。』

キッチンに横並びになり立ちながら言葉を交わしていると

『あんまり頑張りすぎないでね、たまには弱音も吐いて。』

“それに何かこの場面新婚さんみたい”と笑う彼女。

あまりにも胸がきゅっと締め付けられる感覚がし、
皿洗い中にも関わらず、その小さな背に抱き着いた。

「A..好きや、好き。」
『ん、..私も。』
「結婚するならAがいい、これ本気で。」
『本当かなあ。』

おちゃらけたように笑いながら手は動き洗い物は済んでいて。

此方を彼女が振り向くと、一つの口付けが。

『いつでもお待ちしております。』

.

貴方の全てを背負い。【黒】→←シュークリーム。【桃】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (58 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
222人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Rabiy. | 作成日時:2020年9月9日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。