育む。 (ページ40)

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春の訪れ、ハンカチ。【黒】ページ40

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夕暮れ、夕日に照らされる彼は綺麗だ。

雑誌で彼の活躍を見た、今日。
別れてからもう何年経つのだろう。

別れを切り出したのは私。
拒みもせずに受け入れたのは彼。

『もう私達ダメだね、大我。』
「そう、かな。」

学生期間を終えてすぐの彼と進学したばかりの私。
勿論彼はもう既に大舞台で頑張っている時期だった。
その頃にはもうネットも盛んになっていて
目に入れたくない記事も沢山。

そんな中目にしたのは彼のスキャンダル。
きっと彼も分かっていたはずなのに何も言ってくれなかった。

『デビュー、したんだね。』

会社内の雑誌置き場でふと声が漏れた。
喜ばしく嬉しいはずなのに、苦い思い出と
あの頃の想いが鮮明に頭に蘇る。

『..っふ、』

漏れた声と涙を抑える様に手の甲で口元を覆った。
ここはテレビ局内。そう、私はエンタメ業界に就職していた。
彼の努力や辛さを知る為も。
でもその矢先、別れは来てしまって。

「..あの、大丈夫ですか。」

隣から聞こえてきた声、誰にもバレてないと思っていたのに。
視線を横目に見上げるとそこには黒髪のお洒落な人。
あ、大我と映ってた人だ。

「すみません、急に。」
『あ、いえ、此方こそ失礼致しました。』
「これ良かったら。」

綺麗に折りたたまれたハンカチ。
この方の名前はきっと松村さん。

『松、村さん。有難うございます。』
「知ってくれてるんですね、嬉しいな。」

人見知りだと聞いていたが可愛らしい笑顔を見せてくれる。
ハンカチを受け取って

『今度お返しします、必ず。』
「なら連絡先教えてください。」
『..はい？』

人見知りなんですよね？と目を疑う程に早くに出た
彼からの言葉。

「あ、すみません。つい、」
『いえ、恐れ多いです。』

「では又必ず此処で会える様に、俺頑張ります。」
「その時は連絡先、ください。」

少し照れながらハニカム彼は本当に魅力的。
そりゃ人気も出るなと浸りつつ頷くと更に笑みを魅せ

「じゃあ、今日は失礼します。もうどうか泣かないで。」

そう言い残すと良い香りを漂わせて出口に向かっていった。

『あんなにドキドキしたのは大我以来だよ、』

無意識にこんな言葉を呟く自分に驚きながらも
いつしか涙は止まっていて。
彼から受け取ったハンカチをただ抱き締めていた。

新しい春、期待してもいいのかな。

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短くてすみません(;;)
沢山ご評価頂き有難うございます！
引き続き宜しくお願い致します。

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