育む。 (ページ36)

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予期せぬ出来事。【緑】ページ36

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友人の紹介で知り合ったアイドル。
私も知っていた、だって推しだったから。

「初めまして、森本慎太郎です。」
『あ、初めまして。Aです。」

夢かと思った、本当にこんな事があるんだって。
小説では読んだ事があった。フィクションとして。
嗚呼、良いな。って普通に読み終えたけれど。

「Aさんは何してる人なんですか？」
「こいつは普通の事務員だよ。」
「何でお前が言うんだよ。」
私はハハッと笑うしかできない。息が上手く出来ない。
インタビューや動画で見ていた通り気さくで優しい人。
お酒の席だから余計にかも知れない。

ビールを片手に話している姿が余りにも格好良くて
つい見入ってしまっていると

「そんな見られたら流石の俺も恥ずかしいですよ。」
『あ、え、可愛い..』
やば、口が滑った。思わず口元を手覆ったけれど手遅れで。

「格好良いの方が嬉しいなあ。」
なんと恐ろしくあざとい。ふふん、っとそっぽを向きながら
彼は言う。でも少し耳が赤くなっていて可愛い。

『格好良いです、もうずっと。』
「本当？嬉しい。Aさん思ったより小さいですね。」
『いや、急すぎません？』
話が盛り上がり始めた頃、友人が席を立つ。お手洗いと。

「あいつとはどういう経緯の知り合い？」
『高校時代の先輩です。だから私は森本さんのひとつ下で。』
「だと思った、だって小さいんだもん。」
『もう！その弄りやめてくださいよ。』
「ごめんて、でも褒めてるよ。可愛い。」
可愛いと言った後の彼は「やべ。」とした顔でグラスを一気に
飲んでいた。私も動揺で黙ってしまい同じく飲む。

「あれ、お前ら何で無言なの。」
戻って来た友人はハテナでいっぱいって感じ。
「いや、何でもないよ。仲良し仲良し。」
『そうです、仲良し。』
苦笑いにも程がある、二人。
友人も「嗚呼、そう。」と話始めた。

三時間はあっという間に過ぎていき、明日は皆仕事だとお開きに。
友人は帰る方向が逆で店の前で別れた。
そこからは二人きり。推しと二人きり。夢なのかな。

「Aさん、今日は有難うございました。」
『いえ！こちらこそお忙しいのに有難うございました。』
「..良ければ連絡先教えて貰えませんか。」
『え..大丈夫ですか？』
「Aさんは大丈夫な気がして。それに、楽しかったので。」
少し照れたように言う彼はやはり可愛くて。『是非』と返した。

その後はタクシーを拾って解散。
乗ってすぐにメッセージが来た。

“今度は二人で会いましょう。”

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