育む。 (ページ30)

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振り回され、愛でられ、【青】ページ30

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俺には好きな人が居る。
それはメンバー、きょもの彼女。

その彼女は今楽屋に遊びに来ていて隣に座りに来た。
「久し振り、きょもとはどう？」
『順調だよ、樹は最近どう？』
「俺？俺はいつも通り何もないよ。」
『まーた、女の子と遊んでんでしょ。』

こうして揶揄ったりしてくる彼女。距離感バカ。

「うるせぇな、そんなんしてませんー。」
『嘘だ、大我が何か言ってたもん。』
「は、きょも、アイツ。」

なんて焦った真似してみるけど実際本当に何もない。
きょもの彼女だと分かりながら惹かれて、
珍しいなと自分でも思うんだ。

『樹はさ、優しいんだからすぐに好きになられるよ。』
「俺が好きな子に好かれないと意味ないべ？」
『嗚呼、確かにそうか。』

顎に手を当てて探偵のように頷きながら考える彼女。
この愛しい姿を何とか俺の元に、と何度も考えた。
なのにメンバーの顔がちらつき邪魔をする。

「なぁ、もし俺がAの事好きだっていったら如何する？」
『なーに言ってんの、暑さで頭やられた？』

冗談だと思ってやがる、結構本気な顔で言ったのに。
『もしそうだとしても私なんかには勿体無いし、』
『ましてや大我が居るし、ね？』

小首を傾げて俺の方を見る、その目は遊び心も垣間見えて。
俺を試しているのだと感じた。

「俺は二番目でも良いよ、」
『本当は一番が良いくせに。』
「そりゃ欲を言えば勿論そうだけど。」

素直に言葉を発すると彼女はクスクスと笑う。
悪戯な笑みを俺に向けて、

『バレないようにしなきゃね。』

その言葉があまりに衝撃的過ぎて俺は黙ってしまった。
『うーそ、大我居るのに浮気なんて出来ません。』
「は？お前さ、」
『でも樹となら良いかな、って少しは思っちゃったよ。』

“私は悪い女だー！”と楽しそうに足をバタバタさせて言う。
こんな事をしているうちに前半の撮影組が帰って来て、
扉が開いた瞬間きょもは彼女の所へ。

「俺頑張ったよ！A褒めて！」
『んー、良い子良い子。』
と頭を差し出すきょもの頭を笑顔で撫でる姿に胸が痛む。

数分前まではふたりだけの世界だったのに。
あっという間に彼女は遠い存在になってしまったよう。

『樹、次でしょう？』
顔を振り向かせて声を掛けられる。

「嗚呼、そうだよ。」
『頑張ってね。格好良い樹撮って貰って来て。』
「勿論、それでA惚れちまうかもな。」

こんな冗談も笑って聞いてくれる。もう一つ嬉しい点は
きょもに掛けていなかった言葉をくれた事。

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