育む。 (ページ27)

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優し過ぎる彼にはご注意を。【黄】ページ27

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デビューを果たして毎日忙しい日々を送っている彼。
そんな時に私は我儘を何度も言ってしまっていた。

『ねぇ、会いたい。優吾。』
「ん、じゃあ今からバイクかっ飛ばすわ。」

どんなに疲れていても帰りが遅くても一本電話を
入れるとこの返事が返ってくる。
それに私は甘えていた。彼も同じ気持ちで居てくれてるのだと。

でも違っていたらしい。

ある日、いつものように呼び出して家に招いて。
ソファで珈琲を飲んでいる時にふと彼の横顔を見た。
そしたら目の下には隠し切れない程のクマ。

『優吾、最近眠れてる？』
「え？勿論、眠れてるよ。」

いつもの笑顔、かと思いきや違った。
良く見てみれば無理した作った笑み。

『..私無理させてたね、ごめんね。』
「いきなりどうしたの、A。無理なんか、」
『してるよ！私の好きな優吾の笑顔じゃないもん。』

つい大きな声を出してしまう。
申し訳なさと気付かなかった自分の不甲斐なさに涙さえも。

「泣かないで、Aは何も悪く無いよ。」
『もう優しくしないで、お願い。』
「一回落ち着こうよ、ね？」

珈琲の入ったお揃いのマグカップを私の分まで
テーブルに置いてくれて背を撫でてくれる。

『このままじゃ、優吾が優吾じゃなくなっちゃうよ。』
『私の我儘の所為で体調壊されたら、もう。』
「Aは心配し過ぎ。」
『優吾は優し過ぎ。私をダメにする。』

震えた私の手を膝の上で握って顔を覗き込むようにして
沢山の優しい言葉をくれるのに、
何にも応えられない私は最後まで我儘だ。

『..ねぇ、優吾。』
「別れるなんて言わないでね。」

先に言われてしまった、嗚呼この人には敵わないな。
つい黙り込んで更に俯く私。

「俺はAが我儘言ってくれるのも嬉しい。」
「会いたいと思ってくれるのも嬉しい。」
「それを声にしてくれるのも嬉しい。勿論俺も会いたいし。」

「どんな我儘も叶えてあげられるよ、好きだから。」

更に涙が溢れた。別れようと告げようとした自分の情けなさ。
そして嬉しさで。私と同じ気持ちだったんだって。

「このクマの事気にしてんの？」
「これね、元々なのよ。いつもはメイクで隠れてるけど。」
「今日すぐに風呂入っちゃって取れたから目立つね。」

優しい笑い声、私の心を軽く汲み取ってくれる。
やっぱり彼から離れる事は不可能なのかと考えさせられた日になる。

『ごめん、』
「いいの、気にすんな。」

『好き。』
「俺も好きだよ。」

影が重なったのは言うまでもない。

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