酒の香りと君の香りと、【黄】 ページ22
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君とのすれ違いから約2年。
空っぽだった。
些細な事で君を傷つけ、『優吾のバカ、最低。』
こんな酷い事を君の口から吐かせてしまった日。
某番組のオーディションに受かり、忙しい日々が続いた。
そんな時に支えてくれた幼馴染のAが居て。
『優吾がテレビに出てるの信じられないなぁ。』
「だろ？俺もそう思う。」
学校帰りはレッスンもあるので別々だけれど、
たまに窓を開けて二人で話す事があった。
その時間が俺にとって癒しであり特別疲れの取れる
時間になったのは未だに伝えられていない。
だんだん忙しくなりグループにも入れて頂いて、
学校も卒業し本格的に業界に手を入れ込んだ頃。
〜♪
形態が鳴り響いた。Aの文字。
「はいよー、」
『久し振り！元気してた？』
「してたよ、お陰様で忙しいけどね。」
『そうだよね、よくテレビで観るもん。』
あの頃を思い出す会話。
俺がここ五年間程求めていたのはこれだったのか。
初めてAへの好意に気付いた瞬間。
『忙しいだろうけどそろそろ会わない？』
「おお、そうだね。いつ休みか言うわ。」
こうして決められた日時。
一度気持ちに気付いてしまうとやはり緊張する。
今まで何も思わずに居た相手だけど。
約束の日。レッスンと収録を終えて待ち合わせ場所へ。
綺麗なワンピースに身を包んで立っているAの姿を
見付けた瞬間顔がつい綻んでしまう。
『お待たせ、待った？』
「ううん、私も今来た所だよ。」
笑顔は数年前と変わらず声も香りも全て。
明日は休みだからと二人でほろ酔い気分になり、
「私ね、本当はね、優吾の事好きだったんだよ？」
衝撃的な発言に酔いも一気に醒めそう。
『あ、そうなんだ。』
「でも優吾はあっちの世界の人だから言わずに居たの。」
『A、俺、「やっと優吾への想いを消せて彼氏出来たんだ、」
ふにゃっとした顔で俺を見つめる頬を赤らめた君。
嗚呼、俺は遅かったんだな。
その濡れた唇も無防備で華奢な体も全て
俺が守りたかった、もう叶わないのか。
話はAが沢山してくれて、何杯も飲んで。
少しよろける位まで飲んだAの肩を持って会計を。
店から出て外の風を浴びると、
「久し振りの優吾だ、」何て言いながら胸元に顔を埋めた。
『彼氏居るんだろ、やめろよ。』
「いいもん、」
『だーめ、俺もお前も怒られるよ。』
そんな会話をして家まで送り届けた。
そして最後に、
『俺は今でもAが好きだよ。』
戸惑う君にそう告げたんだ。
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作者名：Rabiy. | 作成日時：2020年8月5日 2時
