育む。 (ページ21)

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思い出すのも偶には良い。【青】ページ21

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彼が高校生の時に知り合い、それからはずっと
仲が良かった。

同級生で好きな物が同じで、でも食事には一切興味がない。
家は反対方向だけど校門前で偶然会うと「一緒に帰るべ、」
と言って肩に鞄を担ぐように持ちながら背を向ける。

例え友人と彼が一緒に居ても友人を断る。
そして反対方向の私の家まで他愛もない話をしながら
送ってくれたり。

頼んでやってもらっている訳ではないので一度聞いてみた。
『樹、友達毎回いいの？』
「いいの、気にすんな。」
『何で一緒に帰る事になったんだろうね。』
「..さあなぁ。」
何てやり取りをした後に欠伸をする彼にクスッと笑った。

「何笑ってんだよ。」
『樹が欠伸する時は何かを誤魔化したい時なんだよ。』
「え、嘘、」
『..うっそー！』

こうしてふざけ合っていた三年間だった。

卒業式の日、彼は状況してしまうらしく皆彼の元に。
私の行く隙間もなく“別れの言葉も言えず終いか”と
思いながら数人の友人と写真を撮ってから別れを告げ
帰ろうと校門まで歩いていると後ろから騒がしい足音がした。

「A！ちょ、待てって！」
『うわ、え、樹？』
「何でそんな早く帰んの、俺と話せてねぇじゃん。」
『あんたは囲まれてたでしょうが。』

こんな会話を繰り広げているのがやはり楽しい。
この気持ちが恋愛感情なのかは私には分からない。

「あんさ、俺東京行くじゃん。芸能しに、」
『うん、知ってるよ。頑張ってね。』
「ん、さんきゅ。それでAと離れる事になるじゃん。」
『うん、勿論そうだね。』
「離れたくねぇ。好きなんだよ、お前の事。」

桜が咲く季節、ピンク色の花弁が舞った。

『..実は私も大学で状況すんだよね。』
「は！？俺の緊張感返せよ！いつでも会えんじゃん！」
『私も好き..だと思うし。』
「まだ感情が分かってないのは伝わるよ。だから待つ。」

優しい彼の言葉から幾度なく思い出を作って、二年後に付き合い。
三年目には同棲を始めた、勿論ラッパーくんと。

「A～、風呂入っといで。」
シャワーを浴びた彼が戻って来た。

『はいよー、樹お疲れ様。』
冷やしたビールを彼に渡すと笑みを堪えるにやけた顔で
「あ、ありがと。」と礼を言う彼が愛しい。

「でもその前に、」
と言うと顔が近づいて来て唇が重なる口付けが降って来た。
あの桜を思い出すな。とか呑気な事を思ってると
「やべ、スイッチ入った。」と。

『お風呂入ってからね。』そう言い残す。
だから思い出話はここでおーわり。

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