理由が読めない涙を。【緑】 ページ11
.
今日は世界で一番幸せになる日。
白いレースが綺麗に舞うドレスを着て、いつも以上に気合いの入れたメイク。
貴方はメイクにこだわりがある人はあまり、と言っていたけれど。
私と付き合ってからは、
「あ、A瞼の色変えた？」
「コンタクトも変えたの？似合ってる。」
「睫毛長い〜！」
何て言いながら良く触られてたっけ。
『やめてよ〜！崩れる！』
とか言ってたけど私も私で楽しんでいて。
あの日を今思い出すなんて罪な野郎だなって思ってほしい。
コンコン、と扉の音がした。返事をして体だけを振り向かせて。
すると噂を聞いて来たのかというタイミング。
『慎太郎、』
「A、綺麗だね。今日はピンク色も入れたの？」
と片目を閉じて自分の瞼に軽く触れていた。
『そう、彼が好きだから。』
胸がチクリと痛くなる。
「ごめんな、まだおめでとうって素直に言えなくて。」
女々しくて嫌になるよな。何て言ってる貴方は本当の笑顔じゃない。
『慎太郎は何も悪くないよ、お仕事頑張ってね。』
『忙しいのに来てくれてありがとう。』
そう言って立ち上がると、貴方はこちらに歩み寄ってきて。
今から指輪が通るであろう左手を取って、優しく撫でて来た。
＿＿＿＿ .. やめてよ、そんな事したら貴方を忘れられなくなる。
この悲痛の叫びは誰にも伝わる事なく私の心の中で姿を消した。
「..本当はこの席、俺のだった、かもなのにな。」
『..うん、』
互いに指を見るように俯いている。
何の合図もなく同時に顔を上げて目と目が合えば、
「＿＿ .. 本当に最後にするから、」
その言葉が耳に届いた数秒後には私の頬には貴方の手、
そして唇には貴方の唇。
まだ披露宴は始まってもいないのに、頬に伝うのは私の涙。
この涙の意味は私にも、貴方にも彼にもわからない。
いや、わからないままで良い。
愛してた、もっと傍に居たかった。ただそれだけなのに。
.
女心と一途な彼。【赤】→←心を騒がしくさせるふたり。【緑】【桃】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Rabiy. | 作成日時：2020年8月5日 2時
