YSSB 【短編集】

Orange rose ページ16

『社長、お待ちください』



本日は社長と一緒にパーティーへ参加することになった



薮「待たないよ」



相手はあの菊池様だ



何か失礼があっては困る



『ネクタイが曲がっております。



ネクタイピンはどちらへ？』



薮「えっと…」



ほら



『代わりとしてこちらのネクタイピンをつけておいてください』



薮「ありがとう、星日くん。



今度俺とデートしない？」



『公私混同しないので』



薮「釣れないな」



社長の話を軽くスルーしながら車に乗り込む



『パーティー会場まで30分近くかかります。



少し仮眠してはいかがですか？』



薮「どうしてそんなことを？」



『目の下に薄らですが隈が見えます。



ゆっくりとお休みになられた方がよいかと』



すると社長からの返事はなかった



ミラーで確認するともう寝ていた



早い



『…ふぅ』



小さくため息を着く



公私混同しない



それが私のモットーだ



その為か周りからは真面目や根暗など言われ続けてきた



やっとの思いで今の地位にいる



だけどずっと硬いままでいるのは疲れる



こうやって社長が寝ている時くらいしか息抜きがないからだ



ずっと…このままでいいのかな？



そう考えていると会場に着いていた



『社長、起きてください。



会場に着きましたよ』



薮「んぅ？」



社長はゆっくりと目を開ける



しばらく瞬きをして状況理解したのかキリッとした顔になった



薮「よし、向かうか」



『その前に』



私はスーツのシワを伸ばす



『こういうのも他の方からは見られますので』



薮「やっぱり星日くんはすごいね。



俺の奥さんにならない？」



『結構です』



いつも通りスルーする



けど、考えるんだ



私なんかを…お嫁さんとして貰ってくれる男性はいるのかな



なんて



いけないいけない



私は頬をピシッと叩いて気合いを入れ直した



薮「あれ？



眠い？」



『気合いを入れ直しました』

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