昨日、ピアスを開けた彼女が死んだ。 (ページ3)

今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:163,585 hit

KamiyamaTomohiro ページ3

〆．

Aの席は空席。

そらそうや。もう、座る人はおらんねんから。

しげはそこを心ここに在らずな感じで見つめていた。

「……まぁたAのこと見てるし」

「あ、神ちゃん」

幻覚やとしても、きっとしげにはAの姿が見えてるんや。

クラスメートが校舎の屋上から飛び降りるというのは、多感な時期の俺らには衝撃的なこと。

すっかり沈んだ空気の教室内で、一番のムードメーカーがこんな調子やからどことなく空気も悪い。

………それでええけど。

俺は教室内を改めて見回した。

Aの死の真相は知らん。何故飛び降りたのか、わからんままや。

「Aのこと、水族館に連れてったりたいんやけど……ええかなぁ。好きかな」

「ええんちゃう？この前、いるかのぬいぐるみ兄ちゃんに買ってもらったて喜んでたやん」

「せやんな………よし、頑張ろ」

しげは立ち上がってAの席に目配せし、教室を出ていく。

しげにしか見えへんA。

あいつは死んだことを受け入れることができてへんねん。

こっそりあとをつけた。

〆．