YouTuber Short Stories 3

# ひなまつり - えいじ ページ5

「今日は女の子の日だよ！」


嬉々とした表情で彼女が引っ付いてくる。

カレンダーをちらりと見ると今日は3月3日。そうか、雛祭りか。


「Aは女の子じゃないでしょ」


ひどい、といってAは艶かしく髪を揺らす。
幼い時に比べて控えめな笑い方。
もう女の子なんかじゃない。
立派な女だと思う。


気付いたらいつの間にか大人っぽくなって、垢抜けていて。
他の男達もAに目をやるようになった気がして。
俺と2歳の年の差を感じさせないくらい綺麗になっていた。


「…いつまでも女の子だと思ってたのにな」
「いつまでも女の子だよ」
「もうちがうんじゃね」
「おばさんってこと？」
「うん」
「こら、えいちゃん！」


ぺしんとひ弱な力で肩を叩かれる。


「力はまだまだ女の子だな」
「力はって何なの」
「…急に大人になんなよ」
「何でよ、えいちゃんに近付きたいよ」
「大人になりたい？」
「うん」
「じゃあ大人にしてあげる」


顎をそっと持ち上げ、彼女の口に長いキスを落とす。
少し苦しそうに潤む瞳。
そっと離すと彼女は息が上がって、頰が紅潮していた。


「そんなんで顔赤くなって、やっぱりまだ子供だったな」
「…うるさい」


大人になんてならなくていい。
子供のままでいてくれ。
誰の目にも触れて欲しくないから。

# からみざけ - じょーじ→←# おしてひいて - かめむし

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す