だから私は馬鹿な女のフリをする

5 ページ5

私は伏せ目がちにパスタを見つめ
勢いよくセロリに刺したフォークをクルクルと回しパスタを巻き付け口元に運ぶ
口に含むとフォークを抜き
少し唇についたものを舌で掬う


梓さんのカラスミパスタは美味しい


頬を緩め食べ進めていく



私の好物は彼の入れたキャラメルラテ
彼の作ったペペロンチーノ




そしてハムサンド






彼の好物は私の作ったお菓子達
特に彼は私の作った甘さ控えめのショコラテリーヌが大好きだった



いつも2人で作って食べて他愛のない話をして笑った








決して他人からみたら満たされた生活ではなかったと思う


小さなアパートに2人で住んで
私は大手企業の本社受付嬢として働き
彼はカフェでバイトをして

収入は割と十分であったが私たちはある夢の為に節約をしてお金を貯めていた





私達の夢はずっと2人で幸せに暮らすこと



そして、少しずつお金を貯めて2人で経営するカフェを開くこと





どこかで聞いた事のあるような夢だけど
2人ができることを掛け合わせたこの夢は私達を永遠に繋ぐものだった



夢を叶える為に頑張っていた
その日々だって私にとって私達にとって幸せでかけがえのない日々だった








ちらりと安室透を盗み見る


彼は爽やかな笑顔を客に振り撒き接客をしていた



胡散臭い笑顔



そう思うと目が細まり口角も上がった
傍から見れば視線の先の男が愛おしく自然と零れた笑みのように見えただろう


彼の驚いた顔を見れたことを思い出して
私は更に気分が良くなり弾むようにパスタを食べ進めた





誰かが私を訝しげに見ていたことに
気分の良かった私は気づかなけなかった

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す