花束で殴る

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いつもは声を荒らげたりしない朝陽さんが必死に私の腕を引き寄せて零を威嚇している
いつもはしないことをしている彼どこか別人のように思えた



でも子犬のように震えていてやはり朝陽さんだと感じた


そんな姿をみて
強ばっていた体がふっと解けた



抱き締められていたせいか私の体が解けたのが零に伝わったのだろう
彼は目に見えるよう動揺して
また私を抱き締める彼の力も弱くなった


私はその隙に零から離れ
朝陽さんの胸に収まる


優しい彼の体温に胸が痛くなった
顔を上げると朝陽さんは優しく悲しそうに微笑んだ


私はこの人を振り回している気がして罪悪感に襲われた


私はすっと彼の胸から離れた
自分でも自分がどうしたいのかわからなかったが
この状況はあまりにも2人に不誠実だと思った


この行動すら自分勝手であったとしても
真剣に向き合ってくれている彼らに対して不誠実でありたくなかった



顔を上げ零と朝陽さんの顔を見た



朝陽さんから離れた私を見て複雑な表情を浮かべていた


私はふぅっと一息ついて零に向かって言った



｢また今度時間をとるから
今日は帰って｣



零は何か言いたそうな顔をしたが
渋々と言ったような雰囲気を出して1歩下がった



｢わかった
都合が良い日に連絡してくれると嬉しい


今の連絡先は....これだ｣



彼は胸ポケットから手帳を出しそこに連絡先を書いてページを破って渡してきた


彼の連絡先を持つのも憚られたが
話をするなら必要なため何も言わず受け取った


｢じゃあ｣


彼は踵を返し去って行った


私は次に朝陽さんと向き合った
朝陽さんは依然として不安そうな表情をして困ったように笑っていた


私はその表情に泣きそうになりながら彼を抱き寄せた






｢朝陽さん｣






私がそう名前を呼ぶとぎゅうっと私の体を私が痛くないくらいの力で
離さないと言うように抱き締め返した

その腕はどこか弱々しく私に彼の不安をはっきりと伝えた


私はそれに応えるようにとんとんと優しく背中を撫でる


すると力が緩み
私はすっと彼の肩を掴み少しだけ体を離し目を合わせる


｢ごめんなさい
不安にさせて｣


私はできるだけ彼を安心させようと優しい声色で話した



ｰｰｰｰ
次の話ちょっと大人っぽい雰囲気になるので苦手な方は飛ばして下さい
次の話を読んだ方が雰囲気が伝わると思いますが読まなくても大丈夫なように話を繋げています。

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