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 そうして困っている(暇を持て余しているとも言う。)山鳥毛は、ひとまず、この鍛刀部屋を調べることに決めた。なんだか空き巣をしているようで罪悪感を感じるが、どうせここは山鳥毛の本丸であることに間違いはないのだし、何か企んでいる訳でもないので大丈夫だろう。まぁそもそも顕現したての新刃(しんじん)をほったらかす審神者が悪いのだ。綺麗に自己完結した山鳥毛はうんうんと頷いた。ワイトもそう思いますと心の中のワイトも言っているから無問題である。(言っていないし問題もある。この山鳥毛は意外と適当なところがあるらしい。)

 それでは第一回特命調査〜鍛刀部屋〜を始めよう。調査員は山鳥毛、装備は無銘一文字(さんちょうもう)、お供は刀鍛冶の妖精ちゃん(山鳥毛が先程撫でてやった子だ。どうやら懐かれたらしい。今は手乗りサイズに縮んで山鳥毛の手のひらに収まっている。可愛い。)だ。気分はTRPGの探索者。もちろんAPP(がんめんへんさち)は最大値の18である。

 なんてことを考えながら、まず山鳥毛は部屋をぐるりと見回した。

 ぱっと目につくのは、部屋中に散乱した資材たち。(それを見ていて、山鳥毛は早速悲鳴を上げそうになった。なぜならその中に破れかけたボロボロの富士札を見つけてしまったので。しかも一枚だけじゃない。よく見れば冷却材の中に砥石が沈んでいるし、資材の扱いがめちゃくちゃである。必死に資材のやりくりをしている世の審神者たちに謝ってほしい。妖精ちゃんもあからさまに顔をしかめている。)
 低めに設計されている天井を見上げれば、ヒビの入った小さな豆電球。(しかもフィラメントは切れている。)
 足元を見下ろせば、身じろぎするたびに埃が舞い上がる床。(山鳥毛以外の足跡は見当たらないため、ここの審神者は最近鍛刀をしていないと推測できる。そもそもマトモに鍛刀していればこんな有様にはなっていないはずなので、わざわざ確認しただけ無駄だったが。)

 それにしても、これは酷い。
 まぁ、鍛刀をしないのは審神者の勝手だし、山鳥毛はまだこの本丸の運営方針に口を挟める立場にもないが、せめて掃除くらいはしてほしい。切実に。だってこんな部屋で喚ばれる刀が可哀想である。山鳥毛のことなのだが。

(ふむ。)

 山鳥毛は顎に手をやって、目の前に鎮座している、埃にまみれた金床(かなとこ)(鍛刀する際、熱した鉄を叩くために使用される鉄製の作業台。)に視線を落とした。

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作者名:とまり | 作成日時:2022年7月24日 23時

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