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いつもと同じ様に二人で弁当を持って並んで歩く。
“ 伊野ちゃん ”について聞こうと思ったけどそれは屋上に着いてからで良いか。
すれ違う女子達は俺たちを見るとともに色めき立ち、何度も声をかけられる。
それを軽くあしらいながらやっとの事で屋上へと続くドアの前まで辿り着いた。
大ちゃんに鍵を渡されてそれを使わずにドアノブを回せばすんなりと回って不思議に思う。
「 あれ？」
「 なんだよ山田、さっさと開けろって 」
余程お腹が空いているのか大ちゃんにそう急かされてドアを開けた。
屋上に出てみるとグランド側のフェンスの方に佇む男子が一人。
あれ、あの後ろ姿って...
「 あ〜！！腹減った！」
彼に気を取られていると大ちゃんが馬鹿みたいにでかい声でそう叫ぶからそこに居た彼がこちらに気付き、振り返る。
...やっぱり、
「 えっ...大ちゃんっ！？」
そこに居たのはイノオケイだった。
今日もやっぱり綺麗だな、なんてそんなことよりも...
え、今大ちゃんって
やっぱりこの2人は友達だったのか、
「 ...っ、伊野ちゃん！何してんの、ここはもう来ちゃダメだって...！」
イノオケイを見た大ちゃんが血相を変えて広げていた弁当をも放置し、イノオケイの方に駆け寄る。
そしてそのままこちらに背を向けた大ちゃんが彼に何かを耳打ちすればイノオケイは切なげに笑って大ちゃんの頭を撫でた。
「 山田！ごめん、先食ってて！」
その手を掴んだ大ちゃんがイノオケイの腕を引き、こちらに近付いてくる。
叫ぶ大ちゃんに頷く。
何も言えずにいた俺が二人をただただ見つめているとすれ違う時にクスッと笑ったイノオケイが俺の耳元にその綺麗な唇を寄せた。
「 ...放課後に南棟の図書室、大ちゃんにはナイショで来てね？」
そう囁き、彼は大ちゃんに手を引かれるまま俺と弁当を残して屋上を出て行った。
遠ざかる声の中に大ちゃんが なんて言ったの、と聞く声が混ざっていたけどこれは大ちゃんにもナイショのこと。
俺は一人で屋上に座り、弁当を広げてケータイを手に取った。
送信先は今の彼女。
『 ごめん、今日の放課後は用事が出来たから今度必ず埋め合わせはする 』
それだけを送り、ケータイを置く。
俺の幼馴染であり、親友の大ちゃんに過保護なほどまで守られている男。
大ちゃんにはナイショの約束に優越感を覚える。
イノオケイという人間に興味が湧いた。
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作者名：かすたーどばにら | 作成日時：2018年8月22日 17時
