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11−登坂 ページ11

「A、着いたから起きて」

「うー…」



タクシーでAの家を告げて15分
着くまで寝かせてやろうと
仏心を見せたのが間違いだった。


「起きないし」


最悪だ。

これが遊びの女なら、悩むことなく家に連れて帰るのに
さすがにAを連れて帰るのは気が引ける。



「お客さん、すみませんけど」

「あ、すいません。一旦降ります」


仕方ない。
家の前まで連れてくか。

タクシーを待たせといてもいいけど
ここからうちまで歩いて20分くらい
運動がてら歩いて帰ることにしよう。


タクシー代を精算して
俺はAを背負った。


本当、世話が焼ける。


いつもなら酔い潰れても起こせば起きたのに
今日は完全に爆睡してるみたいだ。


「えーと、鍵、鍵は…」

Aの鞄を開けると、キーケースに家の鍵があり、まずはエントランスを開ける。


部屋は確か
7階のエレベーターに近い角部屋って言ってたな。


鍵を入れて回し玄関を開ける。

さすがに中まで入るわけにはいかないか。


「ほら、着いたから、降りて」

「うー、暖かい…人肌…」

「どんな寝ぼけ方だよ…」


欲求不満の男子かよ。
無理やり剥がすとゴロンと横になるA。

俺の肩から外れた右手が
勢いよく壁に激突する音がする。


「いっっったぁ!」


あ、ようやく起きたか。



「A、家、着いたから」

「いえ……ん??家??ん?登坂…??」


あ、起きた。
と、同時に混乱してる。

…おもしれぇ。




「Aがどうしても上がってほしいって言うから来たんだけど」

「…え?私が?」

「うん。お陰で俺、タクシー逃したわ」




ここまで連れてこられたその代償として
これくらいの冗談は許されるでしょ。


「え、なんで?」

「ん?人肌恋しいとか言ってたけど」


嘘は言ってない。
冗談のつもりでそう言って
適当にネタバラシして帰る


…はずだった。



「…え?ご、ごめん、私、そんなつもりは…」


俺の嘘に動揺して
顔を赤くするAの反応は

俺の中では想定外で。


謎の、スイッチが入った。




「…俺でもいいんだ?」




玄関に座り込んだAの前にひざまずき
Aの左手を右手で掴む。

顔が近い。

どうやら俺も酔ってるな。

何か、いつもより可愛く見える。



「登坂…」

「人肌、恋しいんでしょ?…はい」



手を引き、ふわりと体を腕の中へおさめる。

別に気持ちがあるわけじゃない。

だけど。

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じゅん(プロフ) - お久しぶりです。更新ありがとうございます! (2021年7月11日 16時) (レス) id: c029804656 (このIDを非表示/違反報告)
ちはる(プロフ) - もう、お話の続き見れないですか?(*´ω`*)わたし、NEEさんの小説も東京も大好きです(*´∀`) (2020年5月13日 10時) (レス) id: 48e30b0c83 (このIDを非表示/違反報告)
amiryu(プロフ) - NEEさんだー ( ̄□ ̄;)!!!・・好きです(///∇///) (2019年8月25日 0時) (レス) id: 536b1e31eb (このIDを非表示/違反報告)
ぽちこ(プロフ) - NEEさん、お帰りなさい!!またツクールに来るのが楽しみになりました★ (2019年8月24日 20時) (レス) id: 1e1bf63da6 (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - いいですっ!こんな同僚2人私も欲しいです((笑))。しかも私が好きな臣ちゃん。そしてカタオモイには健ちゃん…たまりません!これからも楽しみにしています! (2019年8月19日 20時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2019年8月18日 1時

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