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5 王宮 ページ5

この国には第一王子の他に、もう一人王子がいた。

この国では跡目争いを防ぐために
国王に王妃は一人とされている。

しかし、例外として
他国との同盟の証としてその国の皇女が送り込まれた場合
その立場を守るために第二王妃とすることが許されていた。


しかしそれは形だけのもので
第一王妃と第二王妃との差は天と地ほど。


同盟関係や王宮での生活、一応の地位は約束されてはいるが

ほとんど公務に出ることも許されない。


だが現国王はこの第二王妃を出来る限り丁重に扱った。



大人しい聖女のようなこの第二王妃が
この国に何か災いをもたらすとは思えなかったし

第一王妃自身もそれに関しては黙認を貫いていた。




そんな第二王妃と国王には
ひとりの王子がいた。



王位継承権のない、第二王子
オミの義理の弟

それが、タカノリ王子だった。



タカノリは母である第二王妃によく似た
大人しく賢く優しい青年で

そんなタカノリをオミは義理の兄として
それなりに可愛がっていた。







「兄上、こんにちは。
エリー王子もいらしていたのですね」


「タカノリ」


「来た、ハクセキの美青年」



エリーがそう言うと
タカノリは苦笑いで会釈した。



"白皙の美青年"
その女性のような美しく可愛らしいとも言える風貌から
タカノリは女たちからそう囁かれている。




「お前と俺が勝負したら
どっちが沢山落とせるかな」

「落とす?」

「女のことだよ」



オミの戯れの言葉に
タカノリは少し驚いた顔をして

そしてにっこり笑って答えた。




「私じゃ兄上にはかないません。
それに私はどちらかというと女性より学問の方が好きですから」

「へー、タカノリ、今なに勉強してんの?」


エリーがタカノリの持つ分厚い書物へと目を向けて尋ねる。
そうして表紙に書かれていた題名を読み上げ首をかしげた。


「染色……?」

「はい。染色について勉強してます。
…国王が、昔美しい色を作る男がいて
その人の作る色に魅せられていたとのお話を聞いて興味を持って」

「染色……賤業か、魔術師だな」

「魔術師?」




オミの"魔術師"という言葉にエリーは聞き返す。
それにタカノリはまた少し苦笑いをしただけだった。








「やっぱ、変わってるよね、タカノリ」


タカノリが彼らの前を去ったあと
そう呟いたエリーの言葉に
オミは頷かずとも同意した。


第二王子が学問に夢中なのは悪いことじゃない。

政に余計な興味を持たれるより
ずっといい。

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花恋(プロフ) - 更新再開お待ちしてます! (2020年7月24日 2時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
amiryu(プロフ) - NEEさん やっと隆二さんの登場ですね〜 これからの展開が楽しみです!! (2018年11月15日 17時) (レス) id: 536b1e31eb (このIDを非表示/違反報告)
ぷにぷに(プロフ) - 新作待ってました!初めまして!ぷにぷにです!私は健ちゃん推しなので、早く健ちゃんに見つけて欲しいと願いながら読んでます!もぉ続きが楽しみです^ ^更新楽しみに待ってます! (2018年6月1日 8時) (レス) id: 60df6d6892 (このIDを非表示/違反報告)
ぐら(プロフ) - NEEさんのお話だいすきです (2018年2月9日 1時) (レス) id: 07d3f7974d (このIDを非表示/違反報告)
ぽちこ(プロフ) - 新作、ありがとうございます!王子が2人。。。これからの展開が楽しみです(●´ω`●) (2018年1月30日 21時) (レス) id: 83b994670a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2018年1月28日 12時

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