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この一瞬のうちに
私は異世界へと飛び立ってしまったみたいだ。


侍女のドレスを着た私。
貴族のお嬢さまが着るようなものじゃないとはいえ
いつもの私が着ているものと比べれば雲泥の差だ。


そんな私の姿が
見たこともないような大きな鏡に映っていることもそうだし

今までどこかの仕入れの業者さんだと思っていたケンジローさんが
まさか貴族だったなんて。

そして
これから王宮へと向かうことになるなんて

まるで夢のような出来事だ。






「馬車は今日が初めて?」



向かいに座るケンジローさんが
私にそう尋ねる。

いつもと違う格好のケンジローさんはかっこ良くて
どぎまぎしてしまう気持ちを抑えて、私は何度も頷いた。



「ははっ、そうか。どう?乗り心地」


「…意外とガタガタする」


「やんなー。おしり痛なってくるよなぁ」




トントンと腰を叩きながら
笑顔で答えるケンジローさんに私は少しだけほっとする。

貴族の身なりでも
ケンジローさんはケンジローさんだ。





「俺は馬車より馬のが好きやな」

「馬……に乗れるの?」

「乗れるで!葦毛のなーめっちゃカワエエ相棒がおるねん」




ニコニコと話すケンジローさん。


馬、か。
そう言えばあのお方、第一王子さまも凱旋の時
白馬を連れていたっけ。




「また会わせたるわ。
何なら今度乗せたるから!楽しみにしといて」



そうケンジローさんが言ったところで
馬車はゆっくりと速度を落とした。



「着いたみたいやな」






とうとう

何もわからないままに、私は王宮に来てしまったのだ。




「ここは城の裏側やからな、ちょっとだけ歩くで」

「は、はい」

「ん。手、貸し?」



馬車を先に降りたケンジローさんは
外から私に手をさしのべてくれる。


何だか少し照れくさい。

まるでお姫さまになったみたいだ。




「ありがとうゴザイマス……」

「ん。
慣れんうちは躓いたりするから気ぃつけ」
「きゃっ」




気をつけろと言われた瞬間
お約束。


慣れない靴がステップを踏み外した。

あぁ、落ちる!


そう思ったとき
ふわりと身体が舞う。





「っぶな!!
ほらー!気ぃつけ言うたやろ?
しゃーないなぁ」


そう言ったケンジローさんは
私の足を地面へと下ろした。


つまづいて転びかけた身体は
自分の足で立ってやっと
ケンジローさんが抱き抱えて助けてくれたことに気づき

初めてドキドキする感覚を知った気がして
私はケンジローさんを直視できなかった。

21 第二王子→←19 ケンジロー



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花恋(プロフ) - 更新再開お待ちしてます! (2020年7月24日 2時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
amiryu(プロフ) - NEEさん やっと隆二さんの登場ですね〜 これからの展開が楽しみです!! (2018年11月15日 17時) (レス) id: 536b1e31eb (このIDを非表示/違反報告)
ぷにぷに(プロフ) - 新作待ってました!初めまして!ぷにぷにです!私は健ちゃん推しなので、早く健ちゃんに見つけて欲しいと願いながら読んでます!もぉ続きが楽しみです^ ^更新楽しみに待ってます! (2018年6月1日 8時) (レス) id: 60df6d6892 (このIDを非表示/違反報告)
ぐら(プロフ) - NEEさんのお話だいすきです (2018年2月9日 1時) (レス) id: 07d3f7974d (このIDを非表示/違反報告)
ぽちこ(プロフ) - 新作、ありがとうございます!王子が2人。。。これからの展開が楽しみです(●´ω`●) (2018年1月30日 21時) (レス) id: 83b994670a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2018年1月28日 12時

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