PEERLESS BLUE

１９ ケンジロー ページ19

「ちょ、あの、ケンジローさん、これ！！」




開かれた扉の向こうにおったのは
とにかく困った顔をしたA。


おー、よう似合うてるやん。



「あの、この格好って」

「ん？うちの侍女のマリアちゃんから借りたドレス！
これ着ていけば王宮の人間は、あーどっかの国のお姫さんのお付きやなぁーって思うはずや！」




潜入するなら見つかっても大丈夫なようにせなあかん。

俺の妹とか親戚にしても良かったんやけど
何かすぐバレそうやし

舞踏会のある今日なら、侍女になりすますのが最適や。



ほんまは綺麗なドレス着せてやりたかったけど
まぁこの侍女スタイルもなかなかかわええよ、うん。



「侍女……ケンジローさん、貴族だったんですね」



あ、そうか。
俺、言うてなかったっけ。


ホンマは隠しときたかったんやけどな
まぁ、しゃーない。



「貴族いうてもたまたまこの家に生まれただけのことや」

「だけど…私、知らなくて」

「うん。知らんかったから今まで普通に話してくれたんやろ？」




俺の屋敷に連れてきて
何も説明せんままに侍女に着付けを頼んで部屋へ放り込んだ。


着替え中、色々聞いたんやろな。
うちの家柄のこと。

まぁここに連れてきて、さすがに黙っとれんわな。




「私、貴族の方とお話出来るような身分じゃ」

「あーー！だから嫌やったんやって！
俺そういうのめっっちゃ嫌いやねん！！
わかる！？
俺貴族かもしれんけど、身分とかそんなん全っ然気にせえへん！」





俺がまくし立てるようにそう言うと
Aは大きな目をぱちくりさせた。



可愛え。



や、なくて！



「あのな、ここに連れてきたんは着替えさせるためで苦肉の策やった！
ほんまは俺、Aには身分明かすつもり全然あらへんかったんやで！」

「はい……？」




わかってんのか？この娘は…




「せやで、な！
俺のことは今までどおり、なんか胡散臭いケンジローお兄さんでええから。わかった！？」




ここまで言うとようやく
Aは表情を緩めて吹き出した。


え、これ、笑うとこなん？






「胡散臭い……たしかに」

「たしかにてなんやねん」


胡散臭いってキーワードに納得して笑てるA。

なんや、府に落ちん。

まぁ俺が自分で言うたんやけど……。



「わかりました、じゃあ
ケンジローさんはケンジローさんで」



そう言って
ようやくAは俺にふわりと笑いかけてくれた。



良かった。

何か府に落ちんとこもあるけど。

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