17 第二王子 ページ17
"魔術師"
染物師をそう呼ぶ者は少なくない。
腕の良い職人ほど美しい色を出し
その美しい色を纏うのは貴族や王族が主なのに
彼らが忌み蔑まれるのは何故だろう?
そんな俺の疑問は
父上がそうしていなかったからこそ
余計にそう思わせた。
先日の母へ献上されたドレスの色も見事だった。
それが魔術のようだとするなら
一度見てみたいと思うのは、俺の悪い好奇心なのかな。
「染 物 師 ねぇ」
「!!」
突如耳元で声がした。
いつもの図書館の奥。
まさか人がいるなんて。
「おっと、失礼。
タカノリ王子様を驚かせてしまい、申し訳ない」
「ナオトさん!」
「よ。なにしてんのー?
俺?俺はね、公務のおサボり!
画家に会議とかいる?いらないよね?」
いつも軽い口調で話しかけてくる宮廷画家は
俺のもとにも神出鬼没でやってくる。
悪い人じゃないんだけど
読めない人だ。
「俺はちょっと調べものを…」
「またえらく俗っぽいね。
染物師、なんて、渋いとこつくじゃん」
「シブイ……?」
やっぱりこの画家の感性はよくわからない。
黙りこむ俺に画家はにやりと笑って顔を近付ける。
「おとぎ話をしてやろうか、タカノリ王子。
昔々あるところに染物師を生業とする男がいました。
男の爪は赤や青、黄色が混ざり真っ黒で、また身体には毒が染み込み触れるものは勿論近付くものは皆、病におかされると言われていました」
即興で作ったであろうその画家の話に
俺は顔をしかめた。
やはり世間の染物師のイメージとはそんなものなのだ。
「あれ?お気に召さなかった?」
「いえ。……男、なのですか?染物師は」
あからさまな嫌悪感を出すわけにもいかず
話をすり替える俺を
ほぅ、と面白いものを見るように見つめる画家。
しまった、話の方向を間違えた?
「なるほど。王子さまは存外ロマンチストでいらっしゃる。
もしかして悲恋がお好きなのかな」
「いやそういうことじゃ」
「染物師は女性で王子に恋をしました。
身分を隠し、白い手袋で手を隠し、偶然出会えた二人は恋に落ちたけれど
正体がバレてしまった魔術師はそのまま
王子を危険に陥れようとした罪を着せられ牢獄へ葬られました」
「!」
「ま、そんなもんですよ、染物師なんて。
王子が興味を持たれるようなものではありません。
では失礼」
そんなもの、か。
どうして興味をもったらいけないのかな。
彼らが生み出す色は
あれほどまでも美しいのに。
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花恋(プロフ) - 更新再開お待ちしてます! (2020年7月24日 2時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
amiryu(プロフ) - NEEさん やっと隆二さんの登場ですね〜 これからの展開が楽しみです!! (2018年11月15日 17時) (レス) id: 536b1e31eb (このIDを非表示/違反報告)
ぷにぷに(プロフ) - 新作待ってました!初めまして!ぷにぷにです!私は健ちゃん推しなので、早く健ちゃんに見つけて欲しいと願いながら読んでます!もぉ続きが楽しみです^ ^更新楽しみに待ってます! (2018年6月1日 8時) (レス) id: 60df6d6892 (このIDを非表示/違反報告)
ぐら(プロフ) - NEEさんのお話だいすきです (2018年2月9日 1時) (レス) id: 07d3f7974d (このIDを非表示/違反報告)
ぽちこ(プロフ) - 新作、ありがとうございます!王子が2人。。。これからの展開が楽しみです(●´ω`●) (2018年1月30日 21時) (レス) id: 83b994670a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NEE | 作成日時:2018年1月28日 12時