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12 第二王子 ページ12

「染物師?」

「はい。
王がかつて、とある染物師に執心であったという話をふと思い出して」



その染物師は身体を患い
色を作れなくなってから

王が"色"に執着なさることはなくなったと言うことだけれど。


幼き頃、当時は父上とお呼びしていた王は
俺に一枚のマントを見せてくださり、仰った。



『タカノリ、見なさい、この美しい緋色を!
これを出せるのはたった一人、神の手を持つ男だけなのだよ』


そう話す父上とは対象的に
幼い俺は疑問をそのままにぶつけた。


『父上、"せんしょく"はいやしい職業であるとならいました。
なぜ"神の手"などとよぶのですか?』



俺の不躾な疑問に
父上は少しだけ悲しげに瞳を揺らした。


『タカノリ、お前にはまだわからないかもしれないし
教育係には違うと言われるかもしれないが

職に貴賤はないし
染色は決して賤しい、気味の悪い仕事ではないのだよ』





幼い俺が理解するには少し難しく
そのことは今まで忘れてしまっていたけれど



先日献上された母のドレスの緋色が
目が奪われるほどにひどく美しく

それを見てふと

当時の王の言葉を思い出し
あぁ、やはり俺も王の血を引いているのだ、という思いが

"染物師"について
調べようという動機になり
今に至るというわけだ。





「ふーん。で、何か勉強になったん?」

「いえ、どれも実感の沸かないものばかりでした」

「そうなん?」


社交的なケンジローさんは

染色に興味があるとは思えないのに
俺が話しやすい空気を造り出してくれる。


それに乗せられ
俺は先ほど読んだ内容を話すことにした。



「この伝記には
"女性にこそ効果的な染色が出来る"とありました。
だけどそれが解せなくて」

「へぇ、なんでなん?」


「王が魅せられた染物師は男性。
その他も我が国で染色に携わる者は男ばかりだと聞きました。
なのにこの伝記には、染物師として優れているのは女性だとある」




宮廷画家も宮廷音楽家も
思想家、哲学者、学者、軍人、商人……

全ては男の職業であり
また女はそんな男たちに寄り添い守られるものだと思っている。


社交界でも女性は
○○公爵夫人などと呼ばれ
夫の地位や資産でその人生が変わると言っても過言ではない。



それなのに何故
この書物にはこんなことが書かれているのだろう?

そんな疑問を口にした俺を見て
ケンジローさんはニヤリと笑った。



「タカノリ。
俺、ひとり知ってるで。

優秀な染物師の"オンナノコ"」

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花恋(プロフ) - 更新再開お待ちしてます! (2020年7月24日 2時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
amiryu(プロフ) - NEEさん やっと隆二さんの登場ですね〜 これからの展開が楽しみです!! (2018年11月15日 17時) (レス) id: 536b1e31eb (このIDを非表示/違反報告)
ぷにぷに(プロフ) - 新作待ってました!初めまして!ぷにぷにです!私は健ちゃん推しなので、早く健ちゃんに見つけて欲しいと願いながら読んでます!もぉ続きが楽しみです^ ^更新楽しみに待ってます! (2018年6月1日 8時) (レス) id: 60df6d6892 (このIDを非表示/違反報告)
ぐら(プロフ) - NEEさんのお話だいすきです (2018年2月9日 1時) (レス) id: 07d3f7974d (このIDを非表示/違反報告)
ぽちこ(プロフ) - 新作、ありがとうございます!王子が2人。。。これからの展開が楽しみです(●´ω`●) (2018年1月30日 21時) (レス) id: 83b994670a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2018年1月28日 12時

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