Mr.PERFECT?

7 ページ7

「あー、飲んだ！」


酒なんて飲むもんじゃない、なんて
つい先日の失態で思ったばかりだというのに。


舌の根も乾かぬうちに
いつもどおり微酔いの私。


「飲んだねー、大丈夫？A」

「だーいじょうぶ！」


いつもどおり、にこにこしながら隆二が腕を貸してくれる。


端から見れば私たちはいい関係に見えるだろう。

現に私は隆二のことが好き。

気が合うし、ユルいけど優しいし
何より聞き上手なところがおしゃべりな私を満足させてくれる。



だけどそれは

断じて、恋愛感情の好きでは、ない。




「隆二って、いい男だよね」
「どうしたの急に」





酔うと、思ったことをそのまま口に出す癖がある。
それが災いしたことも、少なからず、ある。


だけど



「なんか、思っただけ！
隆二が彼氏だったら楽だろうなぁー」




私の、一見誤解を生みそうな発言も
長い付き合いの隆二はちゃんとわかってくれているから。




「俺はちょっとお断りかなーこんな酒癖の悪い彼女…」
「おだまり、隆二！」
「あはは」




こんな風に軽口を叩く関係が心地よい。


いいの、彼氏なんかいなくたって。


楽しく飲める飲み友達がいて

たまに
人生のスパイス的な


そう、あの"岩田事件"みたいな刺激もあって



もうそれでいいんだ、私。


充分幸せだし


恋愛で一喜一憂するのなんて
もうしばらくないことだから


だから余計なストレスなんていらないし。



きっと私は誰かの唯一の"彼女"になる才能がなくて
でもそれは仕方のないことだと思うしかない。





「じゃあね、隆二！」

「一人で帰れる？」

「大丈夫でしょ！おやすみ！」



駅前のアパート住まいの隆二と
駅から徒歩15分の我が家。


駅前でいつもどおり隆二とは別れた。





夏の夜が好きな私にとって
これから夏がくるこの季節のこの夜の時間は
何ともわくわくする。



昔は
夏と言えば恋人と花火に行って、海に行って…と
頭のなかで計画を膨らませるだけで心が浮かれていたものだけれど




日常の些細な楽しみでいい。

今の私には


平穏が一番。





そう、思っていたのに。








「A？」








誰かに名前を呼ばれた。



どこかで聞いたことのある声だった。


振り向く私が視界に捉えたその人を見て
咄嗟に思った。






あぁ、私、酔っぱらってる。





さっき隆二と元カレの話なんてしたせいだ。





こんなところに

元カレが






直人さんがいるわけ、ないのに。

8→←6―隆二

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す