Mr.PERFECT?

44−岩田 ページ44

俺は昔から人の顔色や空気を読むのが得意だった。

それは大人になって
仕事や恋愛に於いて大きな武器となり
気が利く、優しい等の高評価に繋がっている。


そんな俺だからこそわかる。

俺が今一番興味のあるこの女性の一番は
残念ながら俺ではない。




一度は心を開いてくれたはずなんだけどな。

捕まえたと思ったらすぐに逃げられる。




乗り込んだエレベーター。
そこにいたのは俺の想い人。

あの夜以来初めて会うこの瞬間
俺を見た彼女の顔を見ればわかる。



その表情からはやはり

俺がこれまで常に手に入れてきた、
俺に恋する女のそれを読み取ることはできなかった。


そう簡単には落ちてくれないか。


手強いほど楽しい
けどちょっとだけ悔しい。



せめて動揺を与えたくて
俺はエレベーターでこっそり
彼女の手を取った。


指先を絡めると軽く俺を睨んで牽制する様子に
少しだけ満足する。




いいじゃん
6階に着くまでドキドキしてて。

その間は俺のことだけ考えてくれるでしょ？



やがてエレベーターは6階に到着して
彼女は手を離すと先に降りていく。



まぁいいよ、今はこれで。
少なくともすぐに振り払われるほど嫌われてるわけじゃないし。



そうやって満足感を噛み締める俺の目に
違和感が映る。




昼休みが終わる直前のわが部署のフロア。

そこにいた
特に珍しくもない客人に

動揺する彼女。




「あ、A！やっと戻ってきた！」

「りゅうじ…」



ただの友達の登場に
何故か狼狽える彼女。


俺が違和感を覚えたは
その姿はどう見ても今までどおりではないから。



「一緒にメシいこうと思ったのにさ！
てか、色々話したいこととか」

「あ、ご、ごめんね！！午後忙しいから仕事しなきゃ」





なにその感じ。

へったくそ。

ていうか
一晩を共にした俺より気まずそうって何事？



改めて

俺は人の顔色や空気を読むのが得意だ。

気に入った人なら尚更。


何かあるな、これ。



やっぱり一筋縄じゃいかない。


元カレの次は親友？
まぁつけ入る隙は多いに越したことはない。



事情は何にせよ
彼女のおかしな様子が俺の彼女への想いの弊害とならぬよう


またこれを好機とさせてもらいますか。



「澤木さん、次の会議の資料のことで相談が」

「岩田くん…わ、わかった。
ごめん、隆二、そういうことだからまた」



今市さん、すみません。


仲良しの同期だろうと
俺、渡すつもりないんで。

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