Mr.PERFECT?

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「で？」

「で？……って、それだけだけど」

「え？マジで？」



出たよ。

隆二のそのヘラヘラした笑い
どうせ馬鹿だって言いたいんでしょ。



結局朝の大チャンスを無下にした私は
そこから岩田くんと話すタイミングを掴めず

気づけば夜。

携帯には『どうだった？』と隆二のメッセージ。



何もない報告をするために
私はこの飲み屋に隆二を呼び出すことになってしまった。


ビール片手に隆二は
相変わらず私の話を面白がりながら聞いてくる。

ある意味
恒例行事。


「でもさ、その岩田くんはAに普通だったんでしょ」

「うん。見事に普通」

「じゃ、いいじゃん。もうお互い無かったことにしたら」



確かに、隆二の言うとおりだ。

そもそも話さなきゃと思ったのは
今後の仕事に支障をきたさないための先手を打とうとしただけであり

でも今日の岩田くんの様子だと
仕事上に問題などなさそうで



「……そうね」


意識してたのはこっちだけか。


そう思うと何となく残念な気持ちになるのは
別に彼を好きだとかそういうのではなく

何て言うか

女としてどうなんだろう、それ
と思ったりもする。




「なに、もしかしてちょっとくらい意識して欲しかったの？」



隆二が私の様子を見て、そんなことを言う。
相変わらず人の心の機微に敏感な奴ね。



「だってさ、年下の男とそういうことになるって
まだ女として自信持っていいのかなって思うわけじゃん」

「でもなかったことにされて自信なくした？」

「…」





その通り、だけど。

何となく
肯定はしたくなかった。


記憶が曖昧であるにしろ
彼との夜は悪くないものだったし
少なくともお互い、好意がなければそんなことにはならなかった。


年下の男の
仕事場では見られないような姿も見ることができて

ちょっと舞い上がってたところも皆無とは言えない。



それを
"勘違い"だと言わんばかりに
思い上がるな、と言わんばかりに

ある意味完璧な対応をした岩田くん。


スマートすぎて、腹が立つほどだ。




「もうやめよ、この話。てか、忘れよ」

「久しぶりの恋愛になりそうだったのにねー、A」

「忘れよって言った側から蒸し返すな！」




恋愛、か。


もう随分長いこと、そういうものから遠退いている気がする。

異性を異性として意識し
ドキドキして
本気の恋愛をしたのはどれくらい前だっただろう。


最後の恋を歯止めに
そこから私は前へ進めていない気がする。

6―隆二→←4

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