Mr.PERFECT?

24―隆二 ページ24

「Aさんなら今日直帰みたいですよ」



夕刻。
一緒にメシでもどうかなとAの部署に顔を出した俺に
Aの後輩(確か名前はマイちゃん)がそう話しかけてくる。


ホワイトボードを見れば
澤木の名前の横には"直帰"のマグネット。

そして同じものが"岩田"のところにもあることに気付く。




「A、もともとから今日直帰って言ってた？」

違和感を拭い去ろうと尋ねる俺に
いえいえ、とマイちゃんが首を振る。


「Aさん、事務の子のミスのフォローで岩田くんに書類届けに行ったんですけどね」



そこまで言うと、にやりと悪い顔をしたマイちゃんは
少しだけこちらに身体を寄せ、声をひそめた。



「ついさっき、電話あったんです。
岩田くんから、二人とも直帰しますって」

「さっき？」

「そうなんですよぉ！…何となくあやしいと思いません？？」





普通なら

ゴシップ好きな女子社員の単なる邪推だと気にも留めないけど



岩田ってあの例の後輩だよね？





「……また馬鹿なことして」

「え？」

「何でもない、マイちゃん、ありがとね」



背の小さなAの後輩の頭をポンポンと撫で
俺はそのフロアを後にした。




大丈夫かな。

なんか、何となくだけど
また何か起こりそうな気がする。


明日、「隆二、ヤバい！飲みに行こ！」って俺の所にくる
顔面蒼白のあいつの顔が予想できるよ。



本当、なにやってんだか。





『今日はちゃんと帰りなよ！
ヤバそうなら俺呼んでもいいから』




とりあえず、そんなメッセージを携帯に入れておくことにする。


俺、面倒見いいキャラじゃないはずなんだけどな。



でもAは危なっかしいから。





ぽっかり空いてしまった予定。

久しぶりに地元の友達とでも会うか。
最近、Aとばっかり飲んでたからな。










「え、待って。
隆二それ、その子のこと好きなんじゃねぇの？」

「ん？好きだよ、いい奴だし。
俺、女の子の親友って初めてかも」

「じゃなくて、女としてってこと」



顔面偏差値最上級の俺の地元の親友を呼び出し
今日の経緯を話せば

何故かそんな回答が返ってきて、きょとんとする。




「俺、彼女いるんだよ？」

「そんなの関係なくね？
好きになるのなんて理屈じゃねえだろ」




なに言ってんの、臣。




そんなことあるわけないじゃん。

Aはちょっとだけ世話のやける
女の子の親友だよ。

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