Mr.PERFECT?

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一方的な挨拶をして颯爽と去っていった岩田くん。

私はというと、脳内の状況整理が追い付かず
彼が歩き去った先から視線を戻せずいる。




「……A？」

「……」

「Aって」

「！え？な、なに？」




ぼんやりしていた私を怪訝そうに隆二が呼んだ。

そうだった。
隆二、来てたんだったわ。




「何ぼーっとしてんの。
行くよ、ジョッキ空けて新しいビール頼んであるんだから。
それに食い逃げと思われたらやばいし」



隆二に言われてようやく頭を切り替える。

そうだ、考えるのはあとにしよう。





「あ、そうだね！ごめ」






「ん」の１音が吹き飛んだのは


行くよ、そう言って
私は隆二に手を引かれたから。




少し
動揺してしまった。



手を握られるのなんて初めて。






「…え？隆二？」

「すぐふらふらどっか行っちゃうから」

「え？」

「岩田くんはやめときなよ、A」

「はあぁ！？」





見られてた？
聞かれてた？

さっきのキスとか
会話、とか。



いや、そんなはずはない。

だけど
隆二は天然だけどたまに勘がいいから
なにかただならぬ空気感を感じ取ったのかもしれない。


でもありえない。
岩田くんはない。





「ないし！彼女持ちだしありえないから！」

「…ならいいけどね」




隆二はそう言うと、私に、にこ、と笑い
私を連れて焼肉屋へと戻った。





岩田くんを好きになるとかはありえない。

だけど


久しぶりのこの感覚にドキドキしている自分がいるのも
否めない事実だったりするのよね。











「あー、ほら、ビール泡なくなってる！」





戻った先には新しく二つのジョッキが並んでいた。

何となく後ろめたい。




岩田くんの本心はわからないけど
あれは多分気まぐれだ。

素直で可愛い後輩の本性は
実は手が早いのか、或いは不誠実なタイプなのか。



いずれにせよ、もう関わらないに越したことはない。




「っし！飲も、隆二！！」




カチンとグラスを当てて何回目かの乾杯をした。



今こうして、さっきの岩田くんの行動に
ドキドキやモヤモヤを感じずにいられるのは

この、目の前の親友のお陰だ。


まっすぐな隆二のお陰で

私は

そりゃ少しはドキドキしたけど
勘違いも思い込みも、無謀な恋に落ちることもなく
冷静でいられる。


岩田くんのことは、事故。或いは日常。

そう整理出来た。



やっぱり隆二は私の大切な親友。

そして岩田くんにはもう必要以上に関わるのはやめよう。

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