NEE ROOM【JSB】

ストレイ・キャット2 ページ41

そんなこんなで
オミを飼い始めて１週間。

すっかりとその生活に慣れてしまった今
思ったより悪くないと思っている自分がいる。




独り暮らしには広すぎるマンション。
駅近で将来投資用にも売却にもそれなりになりそうなここに引っ越して間もないけど

まさかこんな早くに
自分以外の誰かを招き入れることになるとは思わなかった。

　
オミの部屋は物置にするつもりだった和室。

私の部屋には入らないこと。
部屋は綺麗に使うこと。

その２つを条件に見知らぬ男の居候を許した私は
恐らく第三者から見れば頭がおかしいと思われるだろう。

　
この物騒な世の中で
襲われてもおかしくない。
全財産を奪われて
ううん、命を奪われてもおかしくない

けど


オミの目を見たとき
ふいに思い出したステネコ。


そうだ、この子
あの時のネコかもしんない


なんて、冗談でも思っちゃって
警戒心がゆるんだ私はどう考えてもおかしい。

　

勢いって怖い

だけど人って慣れるもので

　
思ったより品行方正なうちのネコ(・・)の存在は

懸念したほど私の生活を脅かしはしなかった。

それどころか
　



「ただいまぁ」

「おかえり。…お疲れ様」

　
疲れて帰ってきた私を玄関まで迎えに来てくれて



「ん、カバン」

「あ、ありがと」


玄関で私のカバンを持ってくれて

　


「あ、今日もやってい？」

「…お好きに」


そう言うと
ニヤリと、顔を嬉しそうに歪めて

　

「おかえりのハグ♡」


私をすっぽり抱き締めるオミ。


もはや、日課。




クールな見た目に反して甘えん坊なオミを
可愛い、と思う私は

まぁペットが単に
ネコだったか人間だったかの違いだと

この得体の知れない男を受け入れてしまっていた。
　
　




　
「Aさんち居心地いい」

「そぉ？」

「俺、もーちょっと居ていい？」

　

ソファーの隣から
身体を寄せてそんなことを言う上目遣いのペット。

　
ずるいやつ。

そんなのダメなんて言えないでしょ。


　

「どうぞお好きに」


　

そう言うと
ペットは嬉しそうにニヤリと笑い
そのふわふわの髪を私の膝へと落とした。
　


この子はペット。
ただのネコ。

こうやって甘えるのも
ペットだからであって。
それ以上もそれ以下もない。


　
私はそう、深く心にきざみこんだ。




わざわざそうする必要があったのは
不覚にもドキドキする心臓に気付いたからで。


　

それ以上なんてあったらだめ。
　


オミは私の
ただのペットなんだから。

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