NEE ROOM【JSB】

ストレイ・キャット ページ40

幼い頃から
捨てネコを見捨てられないタチだった。
　

動物を飼うと死んだときに悲しいからだめだと
母は許してくれなかったけど

あの助けを求めるような目を見れば
その場に置いて帰ることなんて出来なくて。
　

　

ここで見捨てたら
この子はもう明日には死んじゃうかもしれないんだよ？
　

そのままこっそり持って帰って
当然バレて怒られて

だけどその子は母のネコ好きの知り合いに貰われていって

離れるのは寂しかったけれど
良かった

これであの子は幸せになれる。




そんな私も大人になって
マンションを買って
契約書の"ペットOK"の文字に
あの小さなコネコを思い出した頃




出逢ったの。





それは全然小さくなんてなかったけど

　


人間の言葉を喋る

"捨てネコ"



　




「おねーさん、ペット買うの？」

「は？誰あなた」


　
ペットショップのウインドウに見とれて
その帰り道

突然話しかけてきた不躾な男。

　
長いウェーブのかかった前髪に
フードを被っているから顔が見えない

アヤシイ、男。


無視して歩く私の横をついてくる
ナンパか？


どっちにしろ
こんなアヤシイやつは相手にしない。



　
そう思って早足に歩くけれど
そいつは諦める様子はない。

　



「おねーさん、ネコ派？犬派？」

「……」

「ウサギ？意外と爬虫類とか？」

「……」

「ちがうか。……あ、捨てネコ」

「えっ！？」



しまった、と思ったときには後の祭り。

騙された。
その男のニヤリと笑う口元にそう察する。


最悪。





　
「ネコかー♡」

「…関係ないでしょ」

「おねーさん、捨てネコ拾ったことあるでしょ」

「…だったらなによ」

「俺ね、その時のネコ」
　
「ぶっっ」
　

は？


そんなわけないでしょ？

そう思いながらも吹いてしまった。


しまった。



「ば、ばっかじゃないの！？」

「あー、笑った。
おねーさん、意外と素直だね、可愛い」

　

あーもう最悪。

この手の輩は無視しないとしつこいのに。

　


「ネコ、飼いたいの？」

「まだ決めてないっ」

「ふーん、じゃあさ、俺にしない？」

　

また
馬鹿なこと言ってる。

　

「にゃー」

「にゃーじゃない！ナンパお断り！」

「え、俺、捨てネコだよ？
帰るとこ、ないの」


　


そう言って男は
目深に被っていたフードを外した。

　
現れたのは

驚くほどのいい男。




　
「オミ。俺のこと、飼ってくれる？」








そう、私は

捨てネコを見捨てられないタチなんだ。

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