NEE ROOM【JSB】

年越し H ページ34

『年越し、Aんち行っていい？』


幼なじみで、ついこの前恋人となった登坂広臣が
そんな連絡を寄越してきたのは今日のお昼を過ぎたころ。


友達が多くて華やかな広臣なら
今年も隆二くんやエリーちゃんと年越しイベントに行くものだとばかり思ってたのに。




「本当に来たんだ…」


玄関口でそう言った私に、広臣は綺麗なその顔をしかめた。


「何それ、やなの？」

「そういうわけじゃ」

「どうでもいいから早く入れて、寒い」



どうぞ、と中へいれれば
一目散に彼が向かったのは部屋の真ん中にあるこたつ。



「はぁー♡やば、あったか」


両手まですっぽりこたつに潜り込んで
目を細めて幸せそうな様子の広臣。

まさかうちに暖を取りにきたとかじゃないよね？
まぁ別にいいけど…


「カウントダウンイベント行かないの？」

「んー、まぁ。隆二たちは行ってるみたいだけど」

「あ、今年は誘われなかったんだー？」



茶化してそう言う私を一瞥した広臣は

コーヒーのマグカップを机に置いた私のその腕を掴み

そして



「うるさい」

「きゃっ」


ぐらりと傾く身体に
変わる視界。


私の身体は広臣に抱き寄せられ
こっち、と誘導されるままに動けば
すっぽりと後ろから抱き締められる。



「…ちょ、広臣、狭くない？」

一人暮らし用のこたつ机はそんなに大きくはなくて
二人でこんな風に入ると窮屈なのに

別に、と言った広臣は
私の首もとに顔を埋めた。

ふわふわとした広臣の髪がくすぐったい。



「今年は
こうやってAと二人で年越ししたかったから」

「こたつで？広臣が？……かなり地味だよ？」



昔から華やかな世界で生きてきた広臣。

イベントはいつもたくさんの人達に囲まれてて

だから私は
広臣と恋人同士になっても
そこは許容しようと覚悟していた。

広臣のキラキラした世界を
私が奪ってはいけないと思っていた。

だけど




「いーの、Aがいたら地味でも」

「でも」

「はーあったかい♡こたつ最高♡もう俺外出ない」


そう言いながら
広臣は私を更にぎゅっと抱き締める。

私がいるせいで
こたつになんてちゃんと入れていないくせに。



だけど、素直に嬉しいという気持ちも否めない。




「今頃あいつら寒いとこでカウントダウン待ってんだろなー」

「でも多分綺麗な女の子たちに囲まれてるよ」


羨ましい？と聞くと
馬鹿、と鼻で笑う広臣。



「俺はおまえだけいればいーの」



…うん、私も。

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