NEE ROOM【JSB】

R ver ページ31

長いまつげ
つんとした鼻に
誘うような唇

長い髪が肩にかかり
白く細い指はグラスをもてあそぶ。




綺麗だ
今まで会った人の中で、多分、いちばん。



思わず見とれた俺の視線に気付き
「なぁに」
とあなたが笑う。






「へへ、何か、めっちゃ綺麗ですね」


あ、やばい。
何か軽い感じになってる、俺？

結構マジで言ってるのに
ついヘラヘラしてしまう俺の表情筋をどうにかしたい。





「ありがと」




そんなふうにあしらってまた笑う顔も綺麗だし
それに、何か可愛い。




「指、きれいね。
さっき手を握ったときから思ってたの」


彼女が俺の手を見つめてそう言う。

そうかな？
まじまじと自分の手を見つめる俺を見て
あなたはまた、ふふ、と笑った。

褒められてるんだよね？
それは悪い気はしないけど
てか、あなたの手だって陶器みたいに綺麗だし



「そっちだって、綺麗」

「え……」



グラスに添えられた手をとり
指を重ねてみる。

細くて、華奢で
あなたの手の方が綺麗だ。




触れる手の心地よさに
思わず指をからめる。

しっくりくる感覚。
少し攻撃的に見えるネイルが実は武装なんじゃないかってくらいに
儚げなその手の感触に

俺は実はこの彼女の内面は
見た目とは少し違うんじゃないか
なんて
妄想が膨らんだりもする。



「ちょっと……」

「ん？」

「手、くすぐったい」



味わうようについ触れてしまった手に
彼女が反応する。

その反応がかわいくて
俺はつい

いけない衝動に襲われる。




「くすぐったい？手、弱いの？」

「そんなことは……っ」



擦るように指先を絡め、離し
爪先でくすぐるように
彼女の手のひらを刺激する。

ピクリと反応する彼女の顔を見れば
紅潮する頬

そして少しだけ睨むような視線がこちらを見る。




「ん？」

「……あなた、意外と意地悪なのね」



意地悪、なのかな？

俺はただ
その鉄面皮が崩れたその顔が思った以上に魅力的で


もっと見たい


それだけなのに。




「俺の指が綺麗だって言ってくれたから。…だめだった？」

「あなた、天然？それとも計算？……ずるい」



計算なんてしてないんだけどな。

ただ、素直に


賭けとか関係なく



もっといろいろなあなたのことが見てみたい、


ただ、それだけなのに。

H ver→←N ver

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す