NEE ROOM【JSB】

episode5 近衛隊長【NK】 ページ24

「あなたは…！」

「姫！……まさかここにいらっしゃるとは！」





鋭く細い目が目一杯に開いて、彼は私を見た。



まさかこんな森の奥にいるわけないと
そう思いながらも私を捜しに来た任務に忠実な

我が王国の近衛隊の隊長。



がしゃがしゃと腰の剣を鳴らして
彼は私の元へと階段を上がる。






「ご無事でよかった！
城内にいらっしゃるとは思っていましたが…まさかこんなところまで一人で来られたのですか？」


大袈裟に心配そうに言葉をかけてくる近衛隊長。

それもそのはず、私に乗馬を教えてくれたのはこの近衛隊長である
ナオキだったから。

馬に乗りたいと言って聞かない私が無茶をしないように。

それならば正しい乗り方を教えます、と
教えてくれたのもナオキだし
私と相性の良い馬を選んでくれたのもナオキだった。



「全く……あの時の約束をお忘れになったのですか？」

私にはあまり強く言えないナオキは
それでも私を叱らねばならないと、少し厳しい口調で言う。




約束…。




「一人で遠くにはいかないこと、必ず供をつけること」

「…そうです。
わかっているのにこんなところまで一人で来るなんて
何かあったらどうするのですか！」



あぁ、やっぱり怒られた。

だけどこの森は一応城内なわけだし
何かあったらと言っても
滅多なことなんてないだろうに。






「だって、この塔、ずっと来てみたかったんだもの」


少しだけ膨れっ面をしてナオキを見上げる私は
我ながらズルい。
こうすればナオキが怒れなくなることも知っているから。




「ですが！」

「この塔の言い伝えは知ってるでしょ？
ここで出会ったふたりは恋に落ちるのよ」


「っ……それは」


「でも、どうして悲恋なのかしら？
どうして幸せな恋で終われないの？

それが気になっちゃって、私」




そう言った私は
ただ言葉通りの好奇心を持っていた。

それだけだった。



なのに。





「……ナオキ？」


「っ」




どうしてナオキはそんなに悲しそうに笑うの？

ナオキは、何か知っているの？
この言い伝えの、本当のことを。



だけどそれを聞くことはできなくて。





「さぁ、戻りましょう。
そろそろ日が落ちる。
お身体を冷やしてはいけない」




そう言ったナオキはいつも通りだったけれど


でも、何故かしら？





あの言い伝えの話をしたときのナオキの悲しそうな顔が
私は気になって、仕方がないの。

FriendZone→←episode4 教育係【T】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す