NEE ROOM【JSB】

episode2 謎の男【R】 ページ21

「あなたは…！」


下を覗き込むと、私の愛馬を撫でる一人の男性。



見たこともない顔、服装
但し、高貴な身分だということは一目でわかる。


そんな人が何故ここに？




「こんにちは、A姫」

「あなたは誰？」



塔の下から見上げたその男性はにっこりと私に笑いかけたまま
私の問いには答えてくれない。



「こんなところで護衛もなしに何してるの？」

「…別に。おとぎ話、思い出していただけ」

「おとぎ話？」





教えてよ？と男性が微笑む。

ふにゃっと笑うその顔は人懐っこくて
知らない人なのに何だか気を許してしまいそう。




「この塔にまつわる、伝説なの。
この塔で出会った二人は必ず恋に落ちて、そして悲恋で終わる」

「へぇ、そうなんだ」



そう言って彼はまたにこりと笑うと
塔の下から私の方へと手をのばした。




「じゃあ、俺たちも恋に落ちるのは必然だってわけだ」

「え…」

「その窓から降りてきて、姫。
俺が抱きとめてあげる」




さぁ、とその人が手を広げる。

優しい瞳に吸い込まれてしまいそう。


と、そのとき。



「A様！どちらにいらっしゃいますか！」


兵士の声がする。
その声を聞き、男は広げた手を戻す。



「迎えが来たみたいだね」

「あの……」

「また会おうね」

「待って！」


そう言って踵を返す彼を
私は思わず呼び止めた。



「あなたの、名前は？」





私の質問に
彼はまたにこっと笑ったあと

射るような目で私を妖艶に見て、答えた。








「俺の名前はリュウジ。
俺とここで会ったことは誰にも内緒だよ、姫？」

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