103―直人 ページ5
嘉山常務から助けたあと
何か言いたそうだったAの様子に
俺は気が付かないふりをした。
Aへの想いが
理性でどうにもならないと思い知ったあの夜からずっと
俺は嫉妬とか独占欲とか
そういった醜い感情をあいつに見せたくなくて
もう極力Aとは関わらない
そう決めたのに。
気付けば視線は、Aの姿を探してしまう。
だけど今日だって本当は関わるつもりはなかったんだ。
でも、俺が仮彼氏をやめたせいで
また嘉山の魔の手が伸びるなら
最後にAを助けるのは俺の役目だから。
安心した顔で俺を見るAを見て
俺はまた甦りそうな想いに必死で蓋をする。
駄目だ。
Aにいい人がいるのなら
俺の想いは迷惑になるだけだから。
困るのは、Aだから。
…なんてカッコつけて言うけど
本当は俺が嫌なんだよ。
誰かの傍にいるAを見ることが。
帰り道、そんなことを考え
俺はまた彼女の姿を探していた。
話しかけるつもりはない。
あのあとまた嘉山常務に絡まれていないかを
見届けたかっただけだ。
オフィスから出てきたAは一人だった。
安心して帰る俺が次にAを見たのは
いつもの店で夕飯を買って家に向かう途中。
とあるbarから一人、逃げるように出てきたA。
泣きそうな、顔をしていた。
いつもなら「どうした」と声をかけるのに
今の俺は足がすくんだ。
俺の想いが止められなかったら？
それを拒否されたなら？
本気の想いは、俺を臆病にする。
弱味につけこみたくはないと
カッコつけた俺が邪魔をする。
そのとき
「片岡さん？」
「…登坂」
俺に声をかけたのは、登坂だった。
こいつも俺と同じでAを…
「なぁ、お前、Aのこと本気？」
「…は？」
「いいから。どうなんだよ」
突然の質問に、登坂は眉をひそめた。
「…本気っすよ。
片岡さんから奪う気満々なんで」
随分好戦的だな。
でも、それでいい。
「じゃあ今だけ頼まれてくれない？
Aのこと、送ってやって」
「え？」
俺が指差す方向には
頼りなげにフラフラ歩くAの姿。
「Aさん！」
「頼むわ。…俺じゃ駄目だから」
「は！？」
登坂ならAの嫌がることはしないだろう。
本当は俺が行って手を差し伸べてやりたいけど
駄目だ。
まだ多分俺は
溢れるAへの想いを隠せはしないだろうから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3520人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えりんぎ - 直人さんがすてきすぎました… (2017年4月8日 18時) (
レス) id: 834d4529af (このIDを非表示/違反報告)
ゆーりん(プロフ) - はじめまして！二日間でここまで読破しました！どうしても直人さんが良いなって心の中でウズウズ。。。楽しみにして、4を読ませて頂きます！！ (2017年2月9日 11時) (レス) id: 623fea7ce6 (このIDを非表示/違反報告)
love(プロフ) - 真相も気になりますが、やっぱり...隆二さんと結ばれてほしいです（ ; ; ） 続き楽しみにしています！ (2017年2月5日 15時) (レス) id: e0f37f36d6 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 直人さんがいいなぁ、、なんて思っちゃってます（笑）直人さんの安心感が半端ない！！！！作者さんも更新頑張ってください！ (2017年2月5日 11時) (レス) id: effbf41489 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ぎゃああああトサカ登坂とさかぁ（ ｉ _ ｉ ）隆二ほんとに頑張って、、、(( (2017年2月4日 22時) (レス) id: fc11a717f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NEE
| 作成日時：2016年11月22日 23時
