Acaciaー秘密の恋ー

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「あぁ、俺も会ったよ、オミ」




彼が行ってしまって程なくして
中庭に来た直人さん。
　


"軟禁日"はいつも
退屈な私のために遊びに来てくれる。



　
「すっごいイケメンだよね！
うちの主人とはまた違うタイプの」



「…ですね」




イケメンだったな。

昨日は鋭い眼光に萎縮もしたけど

今日ふと見せた笑顔は何だか優しそうに見えた。



　

「でもめっちゃくちゃ強いらしいよ。
体術もそうだし、先月アメリカから帰ってきたばっかりだけど、銃の腕もスゴいってさ」


　

どこから仕入れてくるのか。

直人さんの情報網は計り知れないけど、

この人のお陰で、私はこの家のことや
その他様々な情報を知り得ることが出来ている。
　




「で、これは噂なんだけど…ちょっと耳かして？」





　
顔を寄せる直人さんに耳を傾ける。

きょろきょろと辺りを見渡した直人さんは
私の耳元で声を潜め、告げた。



　

「ボディーガードっていうのは建前で
本当は暗殺者要員らしいよ？」


「！あん…っ！？」


　
　

声を上げかけて、慌てて手で口を押さえる。



…暗殺！？

ここは日本だし
しかもこの時代にそんなことは…


　
「あり得ないけど、あり得るんだよなぁ…。
やっぱりさ、光あるところには影もあるっていうか。
岩田の脚光の影には闇も存在するんだよ」




確かに剛典さまが命を狙われたのは一度や二度ではないし

剛典さまは、他人の戸籍を消すようなこともできてしまうお方。

　


殺られる前に殺る。

　
時に残忍な剛典さまなら
そう、考えても不思議はない。


　


でも




そんな風には見えなかった。

　
オミ。



あの人が誰かを殺めるなんて
そんなことあるのかな。


　


「あ、でもこれトップシークレットだからね！
岩田が暗殺者雇ってますなんて知れたら全国ニュースどころじゃないから！」



直人さんがまた
周囲を気にしてそんなことを言うけど。




「大丈夫。…話す相手なんていないから」





そうよ

一体誰にこれを話すというの？





籠の中の鳥


或いは


着せ替え人形の私。

　


綺麗な服を着て
ただ一人ご主人様のためだけに存在してる私が

一体誰に話せるというのだろう？






　
「…ごめんな、A」


　

直人さんは私の様子を見て
申し訳なさそうに私の頭を撫でた。

　
直人さんは知ってるから。




私はこのままここから出られず
使い物にならなくなるその日まで

ご主人様の愛玩でいる他ないんだってことを。

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