Acaciaー秘密の恋ー

48―ELLY ページ48

数年前

その話は俺たちの業界ではちょっとした噂となっていた。





裏社会の重鎮である、とある男の孫娘。


俺も何度か会ったことがある、可憐で天真爛漫な美少女だった。


確か、名前は……そう、エリサ。




その美しさに
各界の色んな男が彼女に求愛したけれど


まるでかぐや姫のように
無理難題を押し付けてはそれらを交わしていたある時




ついに彼女は恋に落ちた。






それは自分の祖父が雇った、ボディーガード。



その名が、オミ。







二人がいい仲になるには時間はかからなかったようだけど

そんな恋が、許されるはずもない。




恐らく、秘密の恋だったのだろう。









ある時を境にぱったりとその噂は聞かなくなって


しばらくして、エリサが失踪したと聞いた。







死にものぐるいで探し当てたときには既に遅く


彼女は眠るような美しい姿で見つかり
二度と目を覚ますことはなかった。





…らしい。










ただ一つ

原因は



許されぬ恋に反対されたこと。








そして




傷心のボディーガードは
その心を誤魔化すために

海外へ飛んだときいた。








俺がピンと来たのは







確かそのエリサ、


Aちゃんと雰囲気が似てるんだ。






もしオミがエリサの面影を
Aちゃんに重ねているのだとしたら



そんな哀しいことはない。

オミにとっても
Aちゃんにとっても







そして、ガンちゃんにとっても。







やっぱり俺はガンちゃんの友人だからさ

ガンちゃんにエコヒイキしちゃうんだよ。







地位も名誉もお金も
そして素晴らしい婚約者もいるガンちゃんが




初めて自ら求めようとしているもの。






それが、彼女の心だとするならば





少しだけ協力してあげたくなっちゃうんだよ。





それにほら



秘密の恋なんて

長く続くものじゃないし





エリサのように哀しみの連鎖を生むだけだから。









さぁ、おしゃべりが過ぎたみたいだ。


留守中にこんな話をしていたなんて知ったら
ガンちゃん怒るだろうな？


オミとエリサのことは
ガンちゃんは多分知らないはずだから







これは、内緒だよ。







ガンちゃんに気付かれぬように
こっそり終わらせておいでよ。







今ならまだきっと間に合うから。

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