Acaciaー秘密の恋ー

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「何驚いた顔してんの」



ベッドに座る私に
剛典さまが一歩近付かれる。




「意外？俺がオミを咎めなかったこと」





その質問には私は返事は出来なかった。

それを肯定すれば
私はオミが"嘘をついたこと"を認めることになる。



答えることのできない私に
剛典さまは言葉を続けた。




「オミをまだ解雇するわけにはいかない。
彼の仕事の腕は買ってるから、それに」




剛典さまはまた一歩私に近付き
私の頬に手を伸ばした。




「お前のことを信じてるからね、A」




まっすぐ注がれる視線に
私は後ろめたさを感じていた。



私の忠誠は揺らがないけれど
オミへの想いは未だ…















待ってろ。


剛典さまは私にそう告げると
紗都子さまの所へ戻っていかれた。


そろそろお帰りになられるのだろう。




健全なお付き合いをしている剛典さまと紗都子さまは
これまで一度も夜を供にしたことがない。


門限までにお帰りになる紗都子さまを見送り




そしてまた




今夜も剛典さまは私を訪れる。









ベッドに一人残された私は
そのまま身体を横たわらせて目を閉じた。




思い出すのは




オミ。







私を強く抱き締めた腕は
目を閉じて思い出せば

またあのドキドキした感覚が甦る。






今回はたまたま難を逃れただけ

また同じように
オミに抱き締められるようなことは不可能だろう。




だけど




この後

剛典さまに愛される夜を考えれば尚更


オミ


もう一度



もう一度抱き締めてほしいと
私の心が鳴く。





理性で私は剛典さまを愛し

そして本能ではオミを欲している。






焦らされた身体は熱く、
更にオミに触れられた喜びで

たまらない。





今夜剛典さまの前で乱れたなら

きっとこのこともすべて
あの方にはばれてしまうだろうけれど




それを取り繕う余裕はないかもしれない。




だったらせめて

今だけでもオミの腕のぬくもりを思い出して
浸っていたい。





















その夜、私を訪れた剛典さまは

珍しく言葉少なに私を抱いてくださった。




時折切ないような表情をされたのは気のせいだろうか？




いつもの焦らすような刺激ではなく

むさぼるように私を抱く剛典さまの心はわからないけれど


私はただそこに快楽だけを預けたまま

頭を空っぽにして


全身を剛典さまに委ねていた。

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