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「剛典さん…こちらでお仕事でしたか?
それから、お客様が……」
書斎に入ってきた紗都子さまが見たのは
本棚の前でうずくまる私と
その前にしゃがむ剛典さまの姿だった。
「どうかされましたか!?」
「あぁ、仕事を手伝ってもらってたんだけど
急に気分が悪くなったみたい」
平然と答える剛典さまに
私はこの方の恐ろしさを改めて思い知る。
「大変…大丈夫かしら」
「貧血かな?部屋で休んでおいで」
心から心配そうに見える顔を私に向けて
剛典さまはそうおっしゃる。
私はそのお言葉に従い
ふらりと立ち上がった。
「お顔の色が悪いわ。無理なさらないでね、メイドさん。
それから、剛典さん、あのお客様は…」
お優しい言葉で
紗都子さまが私を気遣い
そして恐らく待たされたままの…オミのことを剛典さまに告げた。
「あぁ、あれは俺が雇ってる人間だから客じゃないよ」
「そうでしたの!だったら」
使用人とわかった紗都子さまは
好意で、こう提案された。
「あの方に彼女を部屋まで連れていってもらいましょう。一人じゃ心配だわ」
人を使うことに慣れているご令嬢は
よい考えだとばかりに満面の笑みでおっしゃった。
そのとき、剛典さまの顔が少し
曇ったことも気付かずに。
書斎から姿を現した私に
オミは少しだけ驚いた様子を見せた。
違和感は感じていただろうけど
私がいたことまでは夢にも思わなかったに違いない。
「あなた、彼女を部屋まで送っていただける?」
紗都子さまがオミにそう命じる。
「…行っておいで、A。
今日は部屋から出ないようにね」
剛典さまが私にそう告げる。
"部屋から出ないように"
それは
"監視できる範囲にいろ"
ということ。
やはり
オミとのことを疑っていらっしゃるんだわ。
「…行くぞ」
オミがそう言って先立つのを私は追いかける。
久しぶりのオミ。
姿を見るだけでドキドキが甦り
傍で歩くだけでも
緊張でどうにかなってしまいそう。
剛典さまに焦らされ尽くした体の熱さも相まって
正常じゃない私は
オミをまっすぐに見れもしない。
そんな私を気にせず
前を歩くオミの服は赤黒い染みで汚れていた。
極秘任務
そう言っていた。
私は彼をなにも知らない。
仕事内容さえも知らないけれど
やっぱり私の心は嘘を付けず
あなたの傍でドキドキするの。
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たかあや(プロフ) - 絶賛全部読み返し中です!同じ名前の曲が出ることに一人で興奮してます(笑)素敵な時間をありがとうございます! (2018年2月6日 7時) (レス) id: 9513f20f64 (このIDを非表示/違反報告)
okgs(プロフ) - とても切ない物語でドキドキしながら読ませてもらってます!すごく胸が締め付けられる思いになりました。その人の気持ちがわかりやすくかいてあり、その気持ちにたって読めるのでいいなと思います。更新楽しみにしてるんで、これからも頑張ってください!応援してます! (2016年7月31日 3時) (レス) id: 6715d7612f (このIDを非表示/違反報告)
百合(プロフ) - ドキドキしながら読ませてもらってます!更新楽しみにしています、頑張って下さい! (2016年6月30日 22時) (レス) id: 42cb9d35cf (このIDを非表示/違反報告)
*今市/登坂LOVE♪♪*(プロフ) - NEEさん» ハイローのツアーも行くんですか??いいですね!羨ましいです!!ちなみにJKですか? (2016年6月26日 21時) (レス) id: 92c067e04f (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - 3jsb-Yua∞kj8さん» ありがとうございます(*^^*)全部読んでいただいてるなんて嬉しいです!今回はきゅんきゅんよりも切なめですが、楽しんでもらえるようがんばります! (2016年6月26日 21時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NEE | 作成日時:2016年6月3日 0時