Acaciaー秘密の恋ー

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雨音が

悲しさでぼんやりした私の頭に響く。




こんなの初めてだから

全然どうしていいかわかんない。








"凍る想いをするかと思えばまた燃え上がり
そしてまた一瞬の内に凍る"







剛典さまが一度連れてってくださった舞台で聞いた歌は
そんな日本語の歌詞だった。







『恋とはどんなものかしら』









そんな題名の歌だったけれど







この気持ちが








燃え上がり凍えるこの想いが恋なら



私はやはり、恋をしているのだ。






こんな風に、ただ彼のことを考えては
何もできなくなってしまうくらいに。
















私はふらりと部屋を後にした。




こんな気持ちで
剛典さまの部屋にいてはいけないと思った。







私にはいずれ天罰が下ることだろう。






身の程もわきまえず




恋を知るには遅すぎた私は
自分の気持ちもコントロール出来ずに




こうして駄目だとわかっても尚
いとおしいと、思ってしまうなんて。












長い廊下を抜ければ
中庭へと続く扉。







私は取り憑かれたかのように
ふらふらと外へ歩き出した。








どうか、雨が洗い流してくれたらいい。


どうにもならない、この想いを。










剛典さまに知られるより前に


オミに醜態をさらす前に










どうかもう、この秘密の恋は

今夜を限りにおしまいにしてしまいたい。














雨に濡れる黄色い花を見ながら

私の身体を打ち付ける雨は
私の頬を伝う涙を隠した。











そのとき











ぼやける視界で

動くものが私を捉えた。









うそ。










何で



何で来ちゃうの？










「お前…馬鹿じゃねぇの？
何やってんだよ…っ」








息が切れている。


走ってきてくれたんだ、

私を、見つけて。









「私だけの居場所なんかないから…
私の泣くための場所なんて、この家にはどこにも…っ」








背を向けてそう答えた私を

強い力が、引いた。







身体に感じた体温。






彼のたくましい腕が
私の身体へと回る。









「どうして…」





「…さぁ？
この雨で頭がイカれてんじゃねぇ？

俺も……お前も」










そういってオミは私に笑いかけた。

瞳に私だけを映して。







降る雨はオミの髪を濡らし
全身を濡らし


そして




滴り落ちる水滴は
彼をより美しく見せていた。





あぁ、今こそ、

時間が止まってしまえば良いのに。

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