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夕方。
私は一人、剛典さまの私室で落ち着かない時間を過ごしていた。
剛典さま不在のときに
この部屋にいることはこれまでにないことで
またこの場所で、剛典さま以外の誰かを待つことも
ありえないこと。
"俺の部屋のデスクの引き出しに封筒が入ってる。
夕方に俺の部屋に報告に来るように言ってあるから"
電話口で剛典さまは、そうおっしゃっていた。
もういつ来てもおかしくはない時間。
彼は…オミは私が一人でいることを驚くだろう。
驚いて、そして
私のお帰りなさいという言葉に
"ただいま"と微笑んで
あの声で私の名を呼んでくれるだろうか?
…あぁ、ダメだ。
せっかく律したばかりの心も
堂々巡りですぐに本心が顔を出す。
あの電話での口振り
きっと剛典さまは、私のことを試されている。
剛典さまの言い付けをちゃんと守れるのか
テストしている。
きっとどこかでそれを見て
もし
もしも私がオミと何かあったとしたら。
…うん、ありえないわ。
この部屋にも剛典さまがいない間はずっと
監視カメラが回ってる。
この部屋にいる以上
剛典さまを欺いて何かがあるなんてこと、ありえない。
ましてオミは
私のことを何とも思っていないかもしれないし。
そう思うとズキリと痛む身勝手な胸を押さえながら
日が落ち未だ止まない雨を大きなガラス窓から覗いていると
コンコン
叩かれる扉に、私は身体を固くする。
返事をする前に開いた扉から姿を見せたのは
………オミ。
眉間にシワを寄せ怪訝な顔の彼に
私は慌てて状況説明をする。
「あの、剛典さま、今夜もお仕事で…
わ、私が代わりに報告を受けてって言われているの!」
何も動揺する必要はないのに
妙な緊張感に襲われる。
「…あぁ、じゃあ。
…無事、任務完了しました」
「お疲れ様、でした…」
そこまで言ってようやく
彼がひどく濡れていることに気づいた。
…雨。
私は彼に近付くと、肩のストールを外し
顔のあたりから髪をそのストールで拭った。
「ごめんなさい、剛典さまのタオルを勝手に使うわけにはいかないし…後で別のタオル出してくるから…」
「いや、Aのストールが」
ふるふると横に首を振り
私は彼の水滴を拭った。
姿を見て思い知る。
どうしよう。
私、この人のこと……
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たかあや(プロフ) - 絶賛全部読み返し中です!同じ名前の曲が出ることに一人で興奮してます(笑)素敵な時間をありがとうございます! (2018年2月6日 7時) (レス) id: 9513f20f64 (このIDを非表示/違反報告)
okgs(プロフ) - とても切ない物語でドキドキしながら読ませてもらってます!すごく胸が締め付けられる思いになりました。その人の気持ちがわかりやすくかいてあり、その気持ちにたって読めるのでいいなと思います。更新楽しみにしてるんで、これからも頑張ってください!応援してます! (2016年7月31日 3時) (レス) id: 6715d7612f (このIDを非表示/違反報告)
百合(プロフ) - ドキドキしながら読ませてもらってます!更新楽しみにしています、頑張って下さい! (2016年6月30日 22時) (レス) id: 42cb9d35cf (このIDを非表示/違反報告)
*今市/登坂LOVE♪♪*(プロフ) - NEEさん» ハイローのツアーも行くんですか??いいですね!羨ましいです!!ちなみにJKですか? (2016年6月26日 21時) (レス) id: 92c067e04f (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - 3jsb-Yua∞kj8さん» ありがとうございます(*^^*)全部読んでいただいてるなんて嬉しいです!今回はきゅんきゅんよりも切なめですが、楽しんでもらえるようがんばります! (2016年6月26日 21時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NEE | 作成日時:2016年6月3日 0時