Acaciaー秘密の恋ー

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剛典さまに連れられて
私は何もわからぬまま
大きなお屋敷にやってきた。

　


たくさんの部屋の前を通り
一番奥。

美しい調度品の揃う
まるで宮殿のような部屋で

私は剛典さまに、運命を告げられた。





　
「A、今日からきみは

俺の愛玩動物(ペット)だよ」





その日から
私の第２の人生が幕を開けた。



　









私はペット、

あるいは人形と同じだった。








綺麗な服を着せられ



剛典さまの意のままに
剛典さまの男としての欲を満たすためだけに生きていた。





過去を棄てた私に残されたのは
Aという名前だけで



　
ずっとこの部屋に閉じ込められたまま
唯一の外は中庭だけだった。








それを辛いと思ったことはない。







剛典さまの借金の肩代わりのお陰で
父の会社は持ち直したと聞いている。



剛典さまは私を大切に扱ってくださるし

あの方のご機嫌さえ損ねなければ
なんの問題もない。




私は、剛典さまに生かされている。





あの方に仕えること、それ以外に生きる術はなくて

この運命に抗おうとすら思いもしなかった。

　






そう


あの夜



あなたにさえ、出会わなければ。





　


　






　





その日はいつもと様子が違っていた。


剛典さまの私邸の中でも
一番セキュリティが厳重なここには
最小限の使用人と特別な客人しか訪れることはない。

　
しかし今日は朝から何となく
どの使用人からも緊張感が伝わってくる気がする。


　


「新しく人を雇うらしいよ？」

中庭に出ていると
庭師の直人さんが話しかけてきた。


私より結構年上なのに
人懐っこい可愛らしい笑顔が

いつも私の心を癒してくれる。


籠の鳥の私が自由に話が出来る
数少ないうちの一人。



彼は岩田のお抱えの庭師で
この広大な庭を一人で管理している。

代々ここに仕える片岡家は
この家で最も剛典さまの信用を勝ち得ている人物だと言っても過言ではない。



　
「雇う…？」

「そう。元CIAだって。ボディーガードかな」


　
裏社会にも顔がきく剛典さまは
大富豪で有名なぶん

この平和な日本ですらも

自分の命を気にせねばならない。



現に数人のボディーガードが殉職したと聞いている。



そんな中
新しく雇われたボディーガード。
　


まぁ、私には関係はないけど。


　


ボディーガードが誰であろうと

私のご主人さまである剛典さまを守ってくれるのなら

　

私は何でも構わないから。



そう、思って、いた。

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