Acaciaー秘密の恋ー

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「A、今日の服は俺が選んであげる」



剛典さまは
時折、気分でそんなことをおっしゃる。

　

ここにある服は全て
剛典さまが私のために買い与えてくださったもの。

　
普段はこの中から自分で好きなものを着るのだけど。


　



「今日はこれにしようかな」


　
剛典さまが選んだのは
胸元が深く開き、スリットが深く入った真っ白なセクシーなドレス。

これを着るためにはドレスに響かない下着を選ぶ必要があるし

とても部屋着とも外出着ともいえない服装。

つまり、剛典さまの趣味なのだけれど



　
剛典さまはその服と封筒を私に渡すと
驚くべきことをおっしゃった。

　



「これを着て、オミに昨夜の報酬を届けてきて」


「…えっ」



　

すぐに了解が出来なかったのは。

男の人にはとても見せられないような身体のラインをそのままに出すドレス。


私にとっては下着で歩くのと同じくらいに恥ずかしい。




　
「どうしたの？二階の部屋まで行くだけだよ？」

「でも…この服は…」


「気に入らない？俺は似合うと思うけど」



恥ずかしいからいやだと言えるわけもない。



「それから、ここに受け取りのサイン貰ってきて。
ドア先で渡すだけじゃなくて、ちゃんとね？」



　


あぁ、わざとだ。

剛典さまのお戯れ。


　
私の羞恥心を煽ってお楽しみになり

そしてオミの忠誠心もはかるおつもりなんだわ。









「いって参ります」

「うん」


　
笑顔で送り出してくださる剛典さま。


私が纏うのは薄い真っ白な布切れのようなドレス。

　



あぁ、どうかいないで。
　

　
手に抱える封筒が重い。





こんな娼婦のような格好でくる私を
きっとオミは軽蔑の目で見るだろう。





だけど剛典さまの言葉には抗えず
私は重い足取りで二階へ向かう。



　

コンコン、とドアをノックした。




返事がない。



　


安心して引き返そうとすると

少し遅れて"ハイ"という声が聞こえた。



　


…いた。




戸惑う私の代わりに
中からゆっくりと顔を出すオミ。


　

驚いた顔で私を見て
次に全身を見て、オミは眉間にシワをうかべた。

　



「…なにか」


「あ、あの、昨夜の報酬をお持ちいたしました」


「どうも」


「受け取りのサインを」


受け取って扉を閉めようとするオミを遮り
私は告げた。


　






追い返してくれたらよかったのに。







「…どうぞ」






観念した私は促されるままに
その部屋に足を踏み入れた。

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