Acaciaー秘密の恋ー

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朝。


　

剛典さまと過ごした翌朝は
剛典さまよりも早く目覚める。


ベッドから起き上がる弾みで起こしてしまわないよう
私は先に身体を起こすことはしないけれど

　
ただ、ただ傍で
剛典さまの瞳が開くのを待ち続ける。




　
目が覚めて
一番に瞳に映す姿が私で

『おはよう』と微笑みかけてくださることは

私の何よりの幸せだ。

　


今朝も自然と目が覚めた。

目の前には剛典さまの寝顔。




閉じられた瞳
端正な造りのお顔は
毎日見ていても見とれるほどに美しい。


命を狙われる立場の剛典さまは
私の傍以外では眠らない。

　
私がほとんど毎夜、寝所を共にすることも
いざとなれば私が身を体にして守る意味合いもある。

　

　
やはり私は全てこの方のもの。

　
剛典さまのためなら
命を擲(なげう)つことすら厭わない。








そのとき



　

コンコン、と

部屋の扉が叩かれた。


　


珍しい。

客人かしら？





その音に反応して
剛典さまはゆっくりと瞳を開ける。





「入って」




目覚めて一番の言葉はそれだった。

少し身体を起こした剛典さまは
視線を扉の方に向けた。


　




　
「失礼します」


　


扉が開き、入ってきたのは






　

─────オミ。


　


「おやすみ中失礼します。例の件で」

「うん。……やった？」


「はい」




やった、とは。




恐らく、直人さんが言っていた

……暗殺。



"殺った"だ。




「さすがだねー！
昨日依頼して、昨夜じゅうに片付けてくるなんて優秀」


「…」


　
ペコリと頭を下げたオミは
昨日見たのとはまた別人のように

表情は、見られない。






「後で報酬を届けさせるから
それまで部屋で休んでて」


「はい」


　


そのまま踵を返し
部屋から出ようとする瞬間、


本当にほんの一瞬だけ

オミと目が合った気がした。





　
ほとんど下着の私。
辛うじて布団で隠していたけど


また思われたのだろう。




主人の"愛人"はまた昨夜も
身体を使って主人をよろこばせていたのだと。





　
それは事実だし
ここで雇われている全ての人間がわかっていることだけど



　
…見られたくなかったな。


　
どうしてこんな感情を持つのだろう？



たかが使用人のひとり。

彼の立場もまた、私と同じなのに。






「オミ、Aのこと見てたね」


彼が退室してから
剛典さまはそんなことをおっしゃる。



ドキドキした私は




"物珍しさかと"



そう簡単に返答して平静を装った。

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