2 ページ2
私の家は小さな会社を経営していた。
昔は従業員も多く抱えていたが
希に見る世界金融恐慌により
会社名義で持っていた投資性商品は破産。
更には膨大に膨らんでいたスワップ取引により総資産は一気に半減。
資金繰りが逼迫した結果
残ったのは借金だけだった。
このまま会社の継続は不可能だった。
従業員に払う給料も確保できず
気づけば手を出してはいけない悪徳金融に資金を借り
家族は借金取りに追われる身となった。
当時高校卒業を目前としていた私は
とにかく家族を守りたかった。
私には夢があった。
昔から憧れていたファッションモデルの世界。
いつかその舞台に立てるようにと
身なりや体型には気を使っていたつもりだった。
だから
"私"の商品価値を見いだした借金取りが
その旨を告げたとき
あぁ私は
自らを美しく見せる術を身に付けてきたのだと
何だか冷静に府に落ちていた。
両親は泣き崩れて謝ったけれど
本気で止めはしなかった。
私には幼い弟がいたし
ここで私がやつらのもとへ行けば
この生活からも解放される。
家族を恨んではいない。
今も幸せに過ごしていてくれたらいいと
心から願っている。
そんなことで
この先どうなるかわからない身の私を
"社会勉強"の名目で
裏社会に出入りしていた剛典さまが見初めた。
「ね、あの子も"商品"？」
「いえ、どうするか考えているところです。
見た目はいいから利用価値は色々あると」
「…ふーん」
借金取りのおじさんに連れられてきた私を
たまたま見つけた剛典さま。
まじまじと私の顔を見つめると
にっこり笑って、剛典さまはこうおっしゃったの。
「俺、この子買うから」
「…え？」
「戸籍、抹消しといて。
ねぇ、きみ、名前なんていうの？」
私に目線を合わせた剛典さま。
初めて見る美しいお顔に私は
この方はもしかしたら王子さまなのかと思ったわ。
「…A、です」
「そっか。
…ねぇ、Aは何でここにいるの？借金？犯罪？」
「…借金、です。父の会社の」
「うん、じゃあ、俺がその借金肩代わりしてあげる。
そのかわり…
今日から俺のために働いてくれる？」
「本当ですか！？」
神様だと思った。
このきっとお金持ちの王子さまは
私に訪れた最後の希望だと。
だけど。
「そのかわり、過去は捨てて」
髪を撫でて、剛典さまは私に笑いかけ
私の手をとった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2681人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たかあや(プロフ) - 絶賛全部読み返し中です！同じ名前の曲が出ることに一人で興奮してます(笑)素敵な時間をありがとうございます！ (2018年2月6日 7時) (
レス) id: 9513f20f64 (このIDを非表示/違反報告)
okgs(プロフ) - とても切ない物語でドキドキしながら読ませてもらってます！すごく胸が締め付けられる思いになりました。その人の気持ちがわかりやすくかいてあり、その気持ちにたって読めるのでいいなと思います。更新楽しみにしてるんで、これからも頑張ってください！応援してます！ (2016年7月31日 3時) (レス) id: 6715d7612f (このIDを非表示/違反報告)
百合(プロフ) - ドキドキしながら読ませてもらってます！更新楽しみにしています、頑張って下さい！ (2016年6月30日 22時) (レス) id: 42cb9d35cf (このIDを非表示/違反報告)
*今市/登坂LOVE♪♪*(プロフ) - NEEさん» ハイローのツアーも行くんですか？？いいですね！羨ましいです！！ちなみにJKですか？ (2016年6月26日 21時) (レス) id: 92c067e04f (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - 3jsb-Yua∞kj8さん» ありがとうございます(*^^*)全部読んでいただいてるなんて嬉しいです！今回はきゅんきゅんよりも切なめですが、楽しんでもらえるようがんばります！ (2016年6月26日 21時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NEE
| 作成日時：2016年6月3日 0時
