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「おーぃ、A!?」
「っえ!?」
「なにぼんやりしてんの。
……健二郎と二人にしてやるから」
私の耳元でそう囁いた直人は
そのまま私と健二郎くんを中に連れていく。
「強引やなー直人さん」
苦笑する健二郎くんを見て私も笑い返す。
私、うまく笑えてる?
心の動揺が外に漏れたりしてないよね?
「このチケット見せたら飲み放題だから!
じゃあ俺ちょっと友達んとこ挨拶行ってくるわ!」
そう言い残し行ってしまった直人。
こんなにあからさまに気を使われると気まずいんだけど…
「じゃあ飲み物とりにいこか」
「そうだね…」
健二郎くんが普通に接してくれているのだから
私も出来るかぎり普通を装おう。
「クラブ来たんとか久しぶりやわー」
「私も」
音楽が鳴り響く室内。
直人が言うように年齢層も思ったより幅広く
居心地の悪さはない。
「…今日の格好はクラブ仕様?」
いつもより短めのタイトなワンピースにライダース。
若作りと思われた?そう一瞬後悔をしかけたけど
「めっちゃ、可愛い」
健二郎くんが笑って言うから安心する。
「ありがと」
「…でもちょっとスカート短すぎひん?」
「え!?…やっぱりイタイかな!?」
「いや、そやなくて」
私の前に立つ健二郎くんが辺りに目を配る。
「周りの男がめっちゃ見とるからいややな、と」
突然見せられる独占欲にドキドキする。
ただでさえこの熱気と
人ごみゆえの距離感にドキドキするっていうのに。
その時。
DJの音楽に合わせて
突然響く、歌。
「あれ?…これ生歌?」
他の客がどよめき、騒ぎ出す。
「外のポスターに生歌とかバンドもやるって書いてあったけどそれかな」
「そうなんだ」
それにしても
なんていい声。
良くとおるけどハスキーで囁くような
甘くてセクシーな
周囲の女性客が騒ぎ出す。
「え!誰あれ!歌うまっ」
「てかめっちゃかっこよくない!?」
私、この声
知ってる。
「すごい人気やなー…てかプロやろかあれ」
「…どうだろう、ね…」
前の舞台でマイクを握るのは
サングラスに
革ジャンに
甘い歌声。
爆音のミュージックと
女性客の騒ぐ声と
そしてあの良い声は洋楽を奏でてる。
あぁ、どうか私に気付かないで。
その気持ちとは反して
私の目は舞台の男から目が離せない。
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ひろみ - 私も臣大好きなので、キュンキュンしながら読みました。どうなるの?とドキドキで、途中でやめる事ができず、夜中までかかって一気に読ませて頂きました。 (2017年4月2日 2時) (レス) id: e9c7ef6696 (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - 3~しかないんですかね??間違ってたらごめんなさい (2017年1月8日 15時) (レス) id: 811aaed8b2 (このIDを非表示/違反報告)
あんな(プロフ) - 毎回毎回キュンキュンしながら見てます!! (2016年9月19日 0時) (レス) id: 16f1420843 (このIDを非表示/違反報告)
maimai(プロフ) - 続きが気になりすぎます(*^^*)!NEEさんのお話大好きです\(^^)/NEEさんのペースで大丈夫ですので、無理せず更新お待ちしております(*^^*)! (2016年5月22日 10時) (レス) id: 31f7cf4807 (このIDを非表示/違反報告)
maimai(プロフ) - あとさんと同じく!隆二くんに触れられてるところを見て、臣にいろいろ大切なことに気づいて欲しいです(>_<) (2016年5月22日 10時) (レス) id: 31f7cf4807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NEE | 作成日時:2016年4月14日 22時