LOvE PANiC 7

303ー直人 ページ10

まさか
　

　

想定外だった。



講義を受ける聴衆の中に
まさかAちゃんがいるなんて。

　
　






　



講義のオファーが来たのは先月。

　
１〜2年目社員対象のものだと聞いて
岩ちゃんはどこかで聞いているだろうと思っていた。

　
　
傾斜のある講義室では
皆の顔が確認しやすい。

　
初めは少し緊張もあって
全てを見渡すことなんてできなかったし

　
一面スーツの人間が並べば
見分けなんてなかなかつかない。



　
　
話始めて緊張もほぐれた頃

俺は周りを見渡す余裕も出ていて
知った顔を、と、岩ちゃんを探していた。





　
その時。

　

たくさんの人の中に

俺が見つけたのは
　
　
　






他でもない、Aちゃんだった。


　





　
　
目を疑った。

　
見間違いかと思ったけど
その隣には岩ちゃんがいるし。


　
　
動揺する心を落ち着けて
何とか俺は予定していた話を終わらせた。


　
　


最後に皆に向けた言葉は
　
自然と、きみに向けて言ったことだってこと




Aちゃんは気付いてくれたかな。


　






休憩時間になり

新入社員からの質問に対応しているうちに彼女はいなくなっていた。
　
　


　

がっかりした反面、良かったのかもしれない、とも思った。
　
そのときようやく、俺の動揺は落ち着いた気がした




…のだけど。


　




『片岡さんは大阪は長いんですか？』


新入社員たちの質問に答える中で俺は知らなくていいことを
知らされることになる。
　


人「あーいや、冬まではこっちにいたんだよ。
岩田剛典、同期でしょ？…その上司」
　


　
『あぁ！岩ちゃんの！？』

『えー？やばくない？その営業所イケメンばっかじゃん』
　


　
さすが。
有名人岩ちゃんは、女子の間で知らない人はいないらしい。
　





『え？じゃあ、岩田くんの彼女も部下ですか！？』

　

…岩ちゃんの彼女？

　
　
『あぁ、あの隣の席の歳上の女の人だよね！』
　

　

…それって？


Aちゃんのこと、だよね。。




いつの間に二人は…
　

　


『え？これ言っちゃだめなやつ？』
　
『き、聞かなかったことにしてくださいねっ』
　
　

　
俺の様子を見てパタパタと走り去る女性社員たちと引き換えに


俺のもとにやってくる、元部下。


　
　

岩「直人さん、お久し振りです」
　
　
「…久しぶり」




　
…もやもやするけれど


　
Aちゃんのことは、聞けなかった。



　

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