LOvE PANiC 7

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「初めまして、小林不動産販売の城木と申します」
　

『あぁ、直己くんのところの！』


　

　





定型文のような挨拶を
何度交わしただろう？
　

開業して一年程度の会社のわりに高い知名度は
さすがは直己さんといったところか。

　
　
代理の私が挨拶をしても軽くあしらわれることがないのは
直己さんのお陰だと

改めて自分の仕える社長のすごさが身に染みる。

　

　
　
臣「疲れた顔してんじゃん」
　
「臣さん」

臣「何か食ってきたら？」
　
　

　
研修会あとの懇親会は
立食形式で

何処かの会社の社長の乾杯のあと
各々で名刺交換が開始された。

他に食事に手をつけるひと
お酒を勧め合うひと…
　
　

　
「…疲れて食べる気になれませんよ…」

臣「それもそうか。
まぁ、あんまり飲みすぎるなよ」


　

そう言いながら
私にシャンパンを渡す臣さん。


　
「…矛盾してません？」




　
臣「それ、ドンペリ。飲んだことある？」

「…ないです」

臣「良かったな、初体験」
　


　

そう言い捨てて、臣さんは他へ挨拶へ行ってしまう。

　

　
また一人になっちゃった。





　
そのとき

　


　

"城木さん"



　
甘い声が私を呼んだ。


　

「田崎社長！？」


田「久しぶり！…今日は直己の代理？」


「はい。…お久しぶりです！退職のごあいさつぶりですよね」


田「そうそう。まさか今日会えると思わなかったから、嬉しいな」


　
にこりと微笑む顔は相変わらずイケメンだ。


　

田「飲んでる？」

「いえ、まだ…」

田「それ、シャンパンだよね。俺も飲む」


　
近くのウェイターに声をかけ、シャンパンを頼む田崎社長。


　
…嫌な予感がする。

　



田「…はい、乾杯」


ぐいっと田崎社長が飲み干すのを見て
私も慌ててグラスを煽る。

　


田「…いいね！いけるクチ？」


「いえ、そんなことは」


田「謙遜はいいからいいから。
もう一杯付き合って？」



傍に控えていたウェイターが
私の空のグラスとシャンパンの入ったグラスを替えてくれる。



…嫌な予感が…



田「はい、もう一回乾杯！！」


　

…まずい。


捕まった。





飲んでも減らないドンペリニヨン。


　

初体験は

　


苦い思い出になるかもしれない…。
　
　

　

　

　

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