LOvE PANiC 7

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「いいな、これ」


　


一目で気に入ったのは
オシャレなカフス。





『いいよね、これ』


後ろからかけられる声に
私は一瞬反応出来なかった。

　
でもすぐわかる。

見なくてもわかる、声。


　

「隆二さん！」




後ろを振り向けば、キャリーケースを引いた隆二さん。
今から出張みたいだ。



　
隆「…買い物？」
　

「通りがかりです…」
　
　
隆「これ、メンズジュエリーでしょ」
　

　
　
薄緑のカラーが有名なこのブランドは
女性のみでなく男性向けアクセサリーも多数にある。




隆「で？Aちゃんがそのジュエリーをあげたい幸運な男は誰？」
　
　
「……」
　

　

　
まさか、渡せるわけもない誕生日プレゼントのために見ていたのだなんて言えない。



　
黙りこむ私に、隆二さんがいつもの笑顔で笑いかける。



　

隆「…直人さん、似合いそうだね、確かに」
　

　

　


…え！？


驚いて見上げるとニヤリと笑う隆二さん。


　
いつもばれちゃうんだ、隆二さんには。
　
　

　

「…似合いますかね」

隆「うん。似合いそう…買うの？」

「買っても…渡せないし」
　
　

　
隆「持ってたら、いつか渡すタイミングくるかもよ」
　
　

…それが確約されているなら
間違いなく買うんだけど。


　
隆「…まぁ、安い買い物でもないからね」
　

「ですね」





じゃあ、また、と駅へ向かう隆二さんを見送り
私はまた店のウィンドウへ目を向ける。
　

　





こうやって何気なく過ごす日常の中で


　
私は目にするいろんなものを
　

直人さんに結びつけて考えてしまう。

　


　
それを辛いと思わなくなったのはいつからだろう？


　


私の心の中に直人さんがいるのは当たり前で

それを認めたからこそ


次の恋に進もうと思えた。

　



忘れられない恋があってもいいよね。



それをお守りみたいに持って



いつかそれが要らないと思える相手が見つかるまで


　
私は前に進めばいい。

　



　


　

「お守り、か」
　




安い買い物じゃないけど

　



　





私はウィンドウを離れると

その横のガラスのドアに手をかけた。
　

　



矛盾してる？


　


違う、前を向いているの。


　



彼の誕生日を笑顔で祝えるくらいには、きっと。




　





だからお守り。



いつか手放せるように。

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