LOvE PANiC 7

295ー直己 ページ2

「あの…私なんか今日おかしいですか？」




　
久しぶりのAとの食事。
　

　
思わずまじまじと見る俺の視線に
Aは気まずそうに少しだけ困った顔をする。

　

　
己「いや…悪いけど意外だった。
いらない心配をしてたというか

…こう、もっと憔悴してるかと」
　
　
「あはは、ご心配ありがとうございます」
　



直人さんがここを離れて3週間。
　
　
忙しくてなかなかAのケアを出来なかったが
ずっと気になっていた。

　


　
直人さんがいなくなって、
まだ悲しみから立ち直れていなくても不思議じゃないと思っていた。


　

「美味しいですね、この海老真薯」
　
　


…元気、だよな？
　
　
無理してるようにも思えない。

　
　
「直人さんもこういう味付け好きそう」
　

　
…忘れようとしてるわけでもない。


この短期間で全てを自分の心に落とし込めたということか？



　


「…直己さん、顔、怖いですよ？」
　

己「あ、あぁ…」

　

動揺してるのは、俺のほうか？


どう話を切り込んだらいいのか悩んでいると
Aの方から切り出した。


　
「本当に大丈夫ですよ？

悲しくない訳じゃないし、
…正直今絶賛乗り越え中ってとこなんですけど
　
直人さんはきっと私が笑ってるのを望んでると思うから」




多分、それは強がりでも綺麗事でもなくて

Aの本心


そう感じた。
　
　



「…強いな。

強くて、優しい……やっぱりお前と直人さんは似てるよ」





そう言うと

Aは嬉しそうに、笑った。
　



　

　


　

　
　
　

"ねぇ、直己。
俺、もうすぐ異動が出ることは彼女には言わないでおこうと思うんだ"


"言わないんですか！？…心の準備とか"
　
　
"んー、そしたらその心の準備期間中
その日までずっと悲しいでしょ？
どっちにしろ悲しくなるなら

１日でも長く彼女には笑っててほしいし"



"…恨まれるかもしれないですよ、直人さん"



"いいよ！
悲しいより怒りのがいいじゃん！！

俺のことずっと怒ってて、女子会の愚痴ネタとかにしてさ、早く大丈夫になってくれたらそれでいいよ"
　
　

　
"それでも悲しい想いは絶対にさせてしまうから。
　
それは俺の罪だね。"


　


　

―そう悲しそうに、話していた直人さん。

　

最初から最後までAを気遣っていた。





　
『直己、彼女と再会させてくれてありがとう』

　

最後の彼の笑顔は、俺は、忘れられない。

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