LOvE PANiC 5

243 ページ48

"何で言わねぇの"
　
　
臣さんの質問に私は言葉を詰まらせる。


　
好きだから言えない？

迷惑をかけたくないから？
　
心配させたくないから？



　
臣「イイコでいすぎるんだよ、お前」
　
　

玄関口で。
　
座りこんでいる私を臣さんが抱きよせる。
　
　
　
臣「…もっと頼れば？
本当は強くないくせに強がってないで」
　

　
優しい声色に

　
こみ上げるのは、涙。
　
　
　
お願いだから、今、優しい言葉をかけないでほしい。
　


　
「イイコなんかじゃないです…」
　

泣きそう。



「ただ…嫌われるのが怖いだけで」
　


…泣きそう。



「でも、直人さんが好き…」
　
　


頭がぐちゃぐちゃだ。

　
本当は直人さんの彼女になりたい。


いつだって傍にいてほしい。

　
今だって
　

　
直人さんに逢いたい。

　
　
逢えばこんな私の悩みなんて
ちっぽけなものに過ぎないのに
　
　



こうして臣さんの腕の中で
泣くことだってないのに。
　
　

でも、気持ちの全てをさらけ出す勇気のある人なんて
世の中にどれくらいいるのだろう？
　



「まだ、３日で、毎日電話もくれて
直人さんは悪くない。

…欲張りな私が悪いんです」
　
　


たがが外れたみたいに
溢れた涙｡
　
　
臣さんがそっと拭うのを
拒否しない私はきっとズルい。




　
会えないのがこれっきりなら
たかが１週間、ここまで思い詰めはしない。



　
今離れている状況が
この春からの予行練習のようで

もしこのまま会えない日がずっと続くのだとしたら

　
私はこの色々なジレンマに
耐えられることが出来るのだろうか？


　
　
そう思うと

もしかしたら私たちに残された結論は


辛いものになるんじゃないか
　

　
そう思ったから。

　

私は何も言えないし

自信もない。

　


恋愛ベタな私が持つ潜在的なトラウマは
業が深くて
　
　
すぐダメな結末を考えてしまうから。




　

臣「わかった、とりあえず」
　


臣さんがぎゅうっと私を抱き締める。




臣「遠距離恋愛向いてないわ、お前」
　



そっと臣さんが私の髪を撫でる手が優しくて

私は思わず臣さんのコートの背中に腕を回してしがみついた。
　



　
溢れた涙。

　
頭は真っ白で
　
　



私は鞄の中で再び鳴る携帯電話に


全く、気がつかなかった。

244ー直人→←242ー臣

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す