LOvE PANiC 5

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えっと、確かここだ。



仕事を終えた私は臣さんの家へやってきた。

　
解熱剤とお粥とポカリと…
とりあえず要りそうなものは一通り揃えて
　

前に聞いた暗証番号で解錠。

　

　
臣さんは玄関に置いといてって言ったけど
さすがにそれは水くさすぎる。

　
この広い部屋じゃ
寝室とキッチンの行き来だけでも辛そうだし。
　


　
「おじゃましまーす…」
　
　
玄関を入れば、ついこの前訪れたときのことを思い出す。



　
臣さんの家に残る、直人さんとの思い出…
　


　
って！

今日は風邪の臣さんの世話で来たんだから！



　
買ってきたものだけ渡して
もし誰か女の人が来る予定ならすぐに帰ろう。

　

寝室のドアをコンコン、と叩く。

　
…返事はない。

　
寝てるのかな？
　
そっとドアを開ける。
　

　
「…臣さーん…」


薄暗い部屋。
臣さんは寝てるみたい。
　
　


起こさないようそっと近付くと

あの、出会った頃みたいなしかめっ面で
額に汗を浮かべながら息を荒くして眠っている。



　
思ったより、辛そうだな。


　

汗拭いてあげたいけど、起こしたら悪いかな。

でも水分もとった方がいいし、
できれば着替えた方がいいかも
　


「臣さん」


サイドテーブルに置いてあるタオルで顔の汗を拭う。
　
　
臣「ん……」
　
　
あ、起きたかな？

　




「臣さん？」

　
　
　

臣「…いづ……」
　
　
　



臣さんの形のいい唇が
ゆっくりと告げた名前は。




"未だに夢に出てくる"と前にも言っていた、
あの忘れられない女性。
　
　
　
泣きそうな臣さんの顔に、私は胸の奥がキュウとなる。

　
　
伝わらない想いのもどかしさは私だってよくわかってるから。
　

　
「臣さん」
　

思わず臣さんの手を握ったのは
"いづ"さんと会ったあのときの臣さんの辛そうな顔を思い出して
　
少し前の自分と重ねたからかもしれない。
　

　
その夢が幸せな夢とは思えなくて
夢から引き上げてあげなきゃいけないと

そんなお節介から。

　

臣「…ん……」
　
「臣さん」
　
臣「…A？」


　
目を覚ました臣さんに何となく安心する。

　
「ぬいぐるみ、到着です！」
　
　

しかめっ面をほどきたくて
笑ってほしくて

　
そう言う私に
　
　
臣さんは、笑う。


　
臣「…おせーよ」

　

臣さんに抱きすくめられた"ぬいぐるみ"
　

　
自分の迂闊さを後悔しても、遅い。

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